竹富町の西表島で採集されたハエの一種で、爬虫(はちゅう)類の血を吸う「サシチョウバエ」が、新種と認められ「イリオモテサシチョウバエ」と名付けられた。琉球大名誉教授(昆虫学)の宮城一郎さんと東京大大学院農学生命科学研究科助教の三條場千寿(さんじょうばちず)さんが、日本衛生動物学会誌「衛生動物」の9月25日付に論文を掲載した。
サシチョウバエは体長2~3ミリ。ユーラシア、アフリカ、南アメリカ大陸の熱帯降雨林から砂漠までさまざまな環境で生息し、日本では北海道を除く各地で確認されている。沖縄島では1980年代、石垣島、久米島で2000年代に確認されたが、日本生息種と同種かは分かっていなかった。
国外生息種は人獣感染症を媒介するが、宮城さんによると日本生息種、西表で発見された新種は人の血を吸わないために感染症を媒介しないという。
宮城さん、三條場さんは2005年から14年にかけて、西表島の古見と上原で雄計18匹を採集。生殖器などの形態を分析したところ、日本生息種と別種であることが明らかになった。
宮城さんは「沖縄、石垣、久米、西表の各島の生息種が同じ種かは今後、遺伝子解析などを進めていく」と説明した。
西表島での新種発見について「日本、中国と異なる生物が沖縄に生息している。新種発見は沖縄の豊かな生物相の、一つの象徴だ」と指摘した。
(安里周悟)