【深掘り】城間市長「雄志さんも喜んでいるよ」 那覇市長選で知念氏支持を表明 オール沖縄を「離反」 強まる革新色に不満 


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知念覚氏にため書きを手渡す城間幹子市長=12日午後6時2分、那覇市おもろまち(大城直也撮影)

 23日投開票の那覇市長選に向けて、これまで支持する立候補予定者を明らかにしてこなかった城間幹子現市長が12日、副市長の立場で同氏を支えた知念覚氏(59)=自民、公明推薦=の支持を表明した。知念陣営は「保守中道」を自認していた「オール沖縄」勢の筆頭首長でもある城間氏の後継指名により、オール沖縄の革新色を浮き彫りにし、オール沖縄支持の保守層も取り込みたい考えだ。オール沖縄を築き、城間氏を後継指名した故翁長雄志前市長(前知事)の次男である雄治氏(35)=共産、立民、社民、社大、れいわ、にぬふぁぶし推薦=を擁立したオール沖縄内には、城間氏に最低でも中立の立場を望んでいただけに落胆と危機感が広がる。

 ただ、オール沖縄からの「離反」(オール沖縄関係者)への反発も強いだけに、城間氏の支持表明が選挙戦にどう影響するかは見通せない。

 「翁長雄志さんも喜んでいるよ」。後援会事務所に着いた知念氏にそう声を掛けたという城間氏は「必勝」と書かれた応援用の「ため書き」も手渡した。雄志氏の名前を随所に出しながら「オール沖縄を形成して出発したあの時に戻りたい」と、革新色が強まっているとされるオール沖縄の現状への不満をあらわにした。

 保守・経済界の相次ぐ離脱などから「オール沖縄の革新共闘色が強まっている」(与党市議)との認識は内部にもある。それが城間氏の自公推薦候補への支持表明で改めて浮き彫りになった格好となった。

 自公の枠組みを超えた浸透を狙う知念氏の後援会組織は、自民の知念氏擁立前から城間氏の支持取り付けに動いていた。城間氏は選挙戦でマイクを握らないとするが「支持表明だけでも『市民党』のイメージとなる」(知念陣営幹部)とほくそ笑む。

 城間氏はさらに知念氏の行政手腕の高さを評価した。翁長陣営関係者は「現職が知念氏の実績を評価していると語ったことは痛い」と頭を抱える。知念陣営幹部も「どちらが市長として優秀なのか城間氏が示した。有権者へのアピールになる」と喜ぶ。

 知念氏への支持表明の場だったはずが、報道陣から質問される中で、城間氏は「私は何を裏切ったのか、逆に聞いてみたい。恩返しができたんじゃないか」と自身を支援してきたはずのオール沖縄への鬱憤(うっぷん)をはき出した。「立つ鳥跡をにごした」(与党県議)。オール沖縄内では落胆と共に今まで対峙(たいじ)してきた自公の推薦候補支援に回った城間氏への反発も強まる。

 自民県連関係者は「城間氏自身が票を持っているわけではなく、支持表明にどれほどの意味があるかは分からない。逆にオール沖縄が怒りでまとまらないだろうか」と警戒感を示した。
 (’22那覇市長選取材班)