インターネット掲示板「2ちゃんねる」開設者のひろゆき(西村博之)さんが名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前を訪れ、抗議日数を示した掲示板について「0日にした方がよくない?」などとツイッターに投稿し、物議を醸した。ネット上では沖縄での基地への座り込み抗議に懐疑的な見方や誹謗(ひぼう)中傷も相次ぐ。世界や沖縄での社会運動での座り込みの位置づけなどについて、東村高江の米軍ヘリ着陸帯建設反対運動などをフィールドワークで研究してきた森啓輔専修大講師(社会学・地域研究)が本紙に寄稿した。
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社会運動一般において座り込みは、署名活動、議会への陳情、公開書簡、集会、ミーティング、デモンストレーション、ストライキ、占拠、などのさまざまな抗議レパートリーの一つだ。
古くは、植民地インドの英国からの独立闘争において、マハトマ・ガンジーの教えを信奉する人々が座り込みを活用した。あるいは労働組合がストライキ中に工場を占拠する座り込みストライキなども1930年代の米国で見られた。
大規模な座り込みは、60年代の米国の公民権運動時代に萌芽(ほうが)した。座り込みは、穏健派や無関心層に対し、デモ隊への共感を呼び起こす戦術だった。これはアフリカ系アメリカ人の学生を中心に構成された。学生らは、人種隔離された白人専用のランチカウンターに座り込んで食事のサービスを求めた。しかし拒否されてもその場から立ち去ろうとせず、暴行を受けた。これがマスメディアに注目され、人種隔離政策に対する内外の批判が増大した。当初4人で開始された座り込みは、7万人の黒人と白人が参加する運動となる。結果として20の州に影響を及ぼし、多くの地域で人種隔離が撤廃された。
戦後琉球列島・沖縄においては、初期の労働運動でストライキと共に用いられた。また、伊江島の米軍基地化によって土地を失った阿波根昌鴻氏ら農民たちが、武装した米兵に殺されない手段として非暴力直接行動をしながら、「乞食(こじき)行脚」や座り込みで米軍に抗議した。以後も座り込みは連綿と受け継がれ多様な社会運動の手段として使用され、近年は辺野古や高江で行われてきた。
基地建設反対運動は、権力の側から継続的に批判やバッシングを受けてきた。今回の騒動は、欧米で既に浸透している、フェイクニュースを生成するようなネットメディアが到来した事件と位置付けられそうだ。それでも座り込みは続くだろう。現場では今まで通り、淡々と毎日が過ごされるのだ。モヤモヤしている人がいるなら、スマホを置いて、座り込む声にじかに耳を傾けてみよう。