【記者解説】沖縄県の「T字型」容認は規定路線 那覇軍港移設 県議会与党に反対意見も


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那覇軍港=2020年8月20日

 那覇港湾施設(那覇軍港)の浦添移設を巡り、沖縄県や那覇市、那覇港管理組合などは8月30日、部長級職員による調整会議を開き、軍港の位置や形状案が民港部分と整合性が取れていることを確認した。防衛省が示した形状案を受け入れる方向性は「既定路線」で、国との移設協議会の開催時期が焦点となっていた。県は移設協議会が開かれる25日に県議会与党に説明する通しだが、与党会派の全てが形状受け入れで一致できるのかは不透明だ。

 関係者によると、県知事選や23日投開票の那覇市長選を避ける形で、10月末に移設協議会を開催することで水面下の調整が進められていた。国側、県側の双方共に、軍港移設が選挙で「争点化」することを避けた形だ。

 那覇港管理組合は、那覇港湾計画の来年3月の改定に向けて作業を進めている。港湾計画改定をスケジュール通りに進めるためにも、軍港部分の形状案の早期合意が必要となっていた。県関係者は「さまざまな論点から国側に質問を続けてきた。これ以上時間を掛けると『意図的』と捉えられかねない」と説明する。

 だが、玉城県政を支える与党会派は、革新政党を中心に軍港移設に反対する意見が根強い。玉城デニー知事は21日の記者会見で「与党の議員には軍港施設に対する考え方の理解を頂いている」と述べたが、与党への形状受け入れの方針説明は難航する可能性もある。

 さらに、現在の那覇軍港で、米軍ヘリによる離着陸や訓練が繰り返されており、国側は代替施設でも、米軍が訓練などで運用する可能性は否定していない。県は「民港の運航に支障は来さないということが確認されている」(玉城知事)と説明するが、受け入れに至った経緯や、判断の根拠について、丁寧な説明が求められる。

(池田哲平)


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