指導力で業界けん引 土肥健一さんを悼む 上里芳弘・沖縄県中小企業団体中央会専務理事


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沖縄そばの手作り教室で、子どもだちに自ら指導する土肥健一さん(右)=2010年、糸満市のサン食品

 土肥健一さんが亡くなられたことに驚いている。沖縄生麺協同組合の初代理事長、サン食品の創業者として生麺業界をけん引してきた。県中小企業団体中央会の理事も歴任され、非常にたぐいまれなリーダーシップを発揮しながらも、いつもにこにこしてとても穏やかな人柄だった。沖縄の経済界に長いこと在籍しているが、これほど功績ある人は数少ない。

 そば粉を使用していないことから「そば」と呼んではならないとした公正取引委員会の警告に対し、業界が一丸となって「沖縄そば」の認可を取り付けた。土肥さんの功績は計り知れない。例えば「沖縄うどん」になっていたら、今の人気はあっただろうか。「沖縄そば」という名だからこそその魅力を伝えることができるし、商品イメージの向上に役立っている。

 組織を立ち上げるためにはリーダーシップが求められる。そうじゃないと人は集まらない。沖縄生麺協同組合は県内の大手業者のほとんどが加盟している。組合の発展は、彼の人柄も影響していると思う。

 組合の設立で小麦粉や油など原材料を安価に仕入れることができるようになり、サン食品としては、家内工業的だった業界の中でいち早く工場を稼働させて大量生産で価格を抑えた。他の業者も負けじと工場を設立するようになり、沖縄の食文化を支え、土産品として全国にその魅力を発信する力にもなっている。

 復帰50年の効果もあって沖縄そばに注目が集まっている。土肥さんの尽力がなければどうなっていたか。業界の発展は遅れていたかもしれない。経営者、組織のリーダーとして尊敬の気持ちだし、県民としても感謝しかない。長年にわたって生麺業界をリードしてお疲れさまでした。 (談)

※注:土肥氏の「土」は右上に「、」