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保守系市長の勢力拡大「玉城デニー県政包囲網」へ オール沖縄の再構築は「排除の論理」脱却が鍵に<激震・県都決戦の波紋>下


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知念覚氏(中央)の当選確実の一報を受けて喜び合う、徳元次人次期豊見城市長(左端)と古謝景春南城市長(左から2人目)、松本哲治浦添市長(右端)=23日、那覇市牧志

 那覇市長選が告示された16日朝、自民、公明が推薦した知念覚氏(59)の出陣式で、松本哲治浦添市長はこう訴えた。「チーム沖縄9番目の知念覚新那覇市長誕生まで力を貸してほしい」

 「オール沖縄」県政に批判的な保守系首長でつくる「チーム沖縄」。昨年まで県内11市のうち6市(名護、うるま、沖縄、宜野湾、浦添、石垣)がチーム沖縄系の首長だった。今年、オール沖縄系が市長だった南城、豊見城、そして県都那覇の3市を含む7市長選全てを勝利で飾り、チーム沖縄は勢力を9市にまで拡大した。

 残る2市のうち、糸満市の當銘真栄市長は知事選などで自公系候補を支援するなどチーム沖縄に接近。元自民県議だった宮古島市の座喜味一幸市長は玉城デニー県政の支持を掲げるが、オール沖縄色は薄い。事実上、オール沖縄の市長は「選挙イヤー」で消滅した。

 自民県連幹部は、地域に根を張る自勢力の首長が増えることで今後の大型選挙でも優位に立てるとの見方を示し「玉城県政の包囲網ができた」と語る。

オール沖縄陣営の翁長雄治さん(前列左から4人目)の開票状況を見つめる玉城デニー知事(同3人目)ら=23日、那覇市古島の教育福祉会館

 この幹部は自公勢力と非自公保守勢力が手を結んだ今回の那覇市長選を通じて、オール沖縄からの離脱を決めかねていた保守系有力者が戻ってきたと語る。「城間幹子那覇市長の離脱が導火線に火を付け、さらにその動きは加速するだろう。オール沖縄はじきに崩壊する」と見立てた。

 “生誕地”である那覇市でオール沖縄は必勝を期し、同勢力を築いた故翁長雄志前市長(前知事)の次男の翁長雄治氏(35)を担ぎ出した。翁長氏の遺志を受け継ぐ象徴的な存在への期待は高く、「まだ早い」との指摘も根強い中でなりふり構わずに擁立が決まった。

 結果は大敗。県政与党幹部は「このままでは再来年の県議選も厳しい結果になる。オール沖縄の原点が何だったのか、ここで見つめ直す必要がある」と自省する。

 米軍普天間飛行場の県内移設断念とオスプレイ配備反対を掲げる建白書の実現を一致点に、保革を超えた体制としてスタートしたオール沖縄。だが次第にそれ以外の政治課題でも、勢力の核となる革新勢力とは異なる主張や行動への「排除の論理」が働き、勢力からの保守系の離脱を招いてきた。

 「『あなたの話は聞いた。だからこちらの話も聞いてほしい』と(保守だった)翁長雄志氏から言われたことを思い出す」。ある革新系のオール沖縄関係者はそう振り返りながら、体制の再構築に向けて「辺野古新基地建設反対は守りながら、それ以外のことへの許容範囲を広げることが必要ではないか」と語った。
 (’22那覇市長選取材班)