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「いいね」で損害賠償に<伊是名夏子100センチの視界から>134


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
イラストも描き、手作りした結婚式の招待状

 いつでも、どこでも、1秒でできることが誰かを幸せにしたり、傷つけたり、取り返しのつかないことにもつながってしまう。

 ツイッター上で、ジャーナリストの伊藤詩織さんへの誹謗(ひぼう)中傷や、デマの書き込みに「いいね」を押し続けた杉田水脈議員に賠償を命じる判決が下りました。議員という立場の人が繰り返し行い、デマの拡散や誹謗中傷をしたことが焦点になった判決です。1年半前に電車に乗れないことを発信し、炎上被害に遭っている私は希望を感じます。オンラインでは何千人、何万人という人が一人の人を攻撃し、それに加担することが簡単にできます。リアルでは考えられない特有の被害です。ずっと声を上げ続けている伊藤さんに尊敬と感謝の気持ちでいっぱいです。

 気軽に使えるのにマナーを学ぶ機会が少なく、ルールも作られていないネット。これを改善するにはDV防止法の流れがひとつの参考になると思っています。家庭内暴力も以前は存在しないものとされ、夫が妻を殴っても当たり前のことと捉えられ、各家庭の問題だから仕方がないと見過ごされていました。しかし可視化され、専門家や議員が動いたことで、20年前に法律が作られ、改定され続けています。

 ネット被害は「リアルの世界のことではないから見なければいいじゃない?」「本人も悪いのでしょう?」と言われることが多いです。しかし家族に連絡を取る時、買い物をする時、勉強する時などあらゆる場面でインターネットを使う必要がある今、本人の問題だけでは済まされません。誹謗中傷の被害に遭い、仕事を失い、命を落とす人もいます。そしてリアルの世界で差別を受けやすい人(女性や障害者、セクシュアルマイノリティー、特定の出生の人など)が、ネット上でもターゲットにされ、被害に遭いやすいです。あと何人の人が傷つき、命を落としたら、法律が作られるのでしょうか。

 私もいまだに毎日のようにデマや誹謗中傷が書かれ、ネットが使えない時があります。侮辱罪が厳罰化され、プロバイダー責任制限法も改訂され「ヤフーニュース」のコメントを書き込む際の電話番号登録も必須になっています。オンラインに特化した法律が早急にできることを願います。同時に、面白いと思ったことでもデマであったり、自分が書き込んだこと、タップしたことが、人を傷つけるナイフになったりする可能性もあると考えたいですね。


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。