琉球王国の風情堪能 玉城朝薫の組踊5作品など上演 からくり花火も実演 国立劇場おきなわ研究公演


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からくり花火「四輪車」=10月16日、浦添市の組踊公園

 国立劇場おきなわの第20回研究公演「朝薫五番とからくり花火」(国立劇場おきなわ文芸研究会考証・演出)が10月14日から16日、同劇場と組踊公園の特設舞台であった。3日間を通し、能舞台形式の「御城舞台」を使い、「入子躍(いりこおどり)」と組踊の創始者・玉城朝薫作の組踊5作品を上演した。約150年前の記録から復元したからくり花火「四輪車」の実演や上映もされた。「琉球戯曲集」を台本に演出や衣装、道具を可能な限り復元・復活し、構成した舞台を通じ、観客は琉球王国時代の風情を楽しみ、往事に思いをはせた。

地謡に鼓も入り上演された「執心鐘入」=10月14日、浦添市の国立劇場おきなわ

 14日は雨天のため屋内で組踊「執心鐘入」と「女物狂」を上演した。現在は見られないが、かつてはあった地謡の鼓を「能囃子方小鼓」人間国宝の大倉源次郎が務めた。鼓は「執心鐘入」での宿の女が出てくる場面や、鬼女が祈り伏せられる場面、「女物狂」での母が狂い踊る場面などに用いた。繰り返し干瀬節を歌い「宿の女」の心の変化を表現する場面では、「組踊音楽歌三線」人間国宝の西江喜春が最後の干瀬節を歌った。西江は下句を「述懐節」の節回しで歌い上げ、舞台を盛り上げた。

緋色の衣装で華やかに踊る「入子躍」=10月15日、浦添市の組踊公園特設舞台

 2日目は「入子躍」(又吉靜枝構成原案、金城厚考証、喜屋武愛香振り付け・指導、山内昌也音楽指導)と組踊「孝行の巻」を上演した。「入子躍」で若衆は、緋色の振り袖と足袋、金の刺しゅうが施された脚半、三輪小菊の作花(つくりばな)(髪飾り)のいでたちで、晴れ晴れと踊った。

 3日目は組踊「銘苅子」と「二童敵討」を上演した。「二童敵討」では鶴松と亀千代きょうだいが、母との別れの場では紅白の小花を散らしたかんざしを着け、あまおへと対面する場面では大きな金花のかんざしで華やかに舞った。太鼓は「組踊音楽太鼓」人間国宝の比嘉聰が務めた。

金の花の髪飾りをつけてあまおへ(右)と相対する鶴松・亀千代きょうだい=10月16日、浦添市の組踊公園特設舞台

 「御城舞台」は、御冠船の際に首里城内に設けられた舞台。一つの橋掛かりより出入りがされる同舞台ならではの、登場人物の配置や演出でも楽しませた。

 国立劇場おきなわ文芸研究会の代表で、同劇場調査養成課課長の茂木仁史さんは「『入子躍』の踊り手が持つ風車が、屋外の風で自然と回ることなど、やって初めて分かることがある。大きな髪飾りも、時代がかった良さがあった。研究会形式で、衣装をはじめ分野ごとに専門家の知識を得たことでも、多くの収穫があった」と話し、研究の成果に手応えをにじませた。

 公演に合わせて国立劇場おきなわで9月、「公演記録鑑賞と講座 踊衣装を考える」が、講師に古波蔵ひろみ氏、吉村晴子氏、寺田貴子氏を招き、開催された。

(藤村謙吾)