文化財修復 技を次代へ 県芸大院生、専門家招き授業<首里城焼失3年・きょうから正殿復元工事>


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文化財保存修復の授業について語る高嶺瑞貴さん(左)、前田美海さん=那覇市の県立芸術大学

首里城火災で被害を受けた美術工芸品のうち、最も点数が多かったのが漆器だ。火災の熱や消火活動による水の影響を受け、劣化してしまった。一方で人材育成の観点では、学生たちが専門家の指導を受け、修復作業を学ぶ取り組みが進んでいるのも漆芸の分野だ。

県立芸術大で2021年度から、大学院生を対象に「文化財保存修復」の授業が隔年で実施されている。東京芸術大などから専門家を招き、座学から実践的な内容までを学ぶことができる。院生らは漆器の貝の浮きや亀裂など、実際に修復が必要となるパターンを再現した手板を用いて、作業を体験する。

修復は文化財の被害状況などによって作業や材料などを変える必要があるため、作品の制作とは全く違った知識や技術、経験が求められるという。

県立芸大美術工芸学部の當眞茂教授は「学部で漆芸の基礎を学んだ学生たちが興味を持てば、次の段階へ進むことができる。この授業を受けるだけで一人前の修復士になれるわけではないが、経験を積むことで卒業後の選択肢が増える」と話す。

1992年の前回復元後の大規模修復などを通じ、建築に関する漆塗装などでは沖縄の職人の技術は向上したという。ただ漆器などの文化財の保存修復については、県内の人材育成は途上にある。

昨年9月に文化財保存修復の授業を受けた大学院生の前田美海さん(24)は、3年前の首里城火災について「芸大祭の準備期間だったが、作業も手に付かなくなるほど衝撃を受けた」と振り返る。「現状を維持することを目的とする文化財保存修復は、作品を作るのとは全く違うことを実感した」と語る。

ともに授業を受けた高嶺瑞貴さん(24)は「修復は『昔の人と対話すること』だと学んだ。文化財が劣化したところから学ぶことがたくさんある」と話す。その上で「沖縄で文化財保存修復を学ぶことができる場が、もっと増えるとうれしい」と語った。

文化財保存修復の授業を受けた前田美海さん(前列左)、高嶺瑞貴さん(同右)と當眞茂教授
文化財保存修復の授業を受けた前田美海さん(前列左)、高嶺瑞貴さん(同右)と當眞茂教授

 首里城正殿の復元工事が3日、本格的に着工される。2019年10月31日の火災で焼失してから3年。県内外を問わず多くの人が首里城に心を寄せ、復興を願ってきた。正殿は26年秋ごろまでに完成が見込まれる一方、首里城内で被災した美術工芸品の修復にはさらに長期間を要するとの見通しがある。1992年の復元時よりも県内の担い手の人材育成が進み、より県民主体の復興となることが期待されている。