なぜ?ケナガネズミの事故死増…生息数の増加も影響か 専門家「運転速度の抑制を」


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ケナガネズミのロードキル防止を訴えるマグネット・ステッカー

 世界自然遺産に登録された沖縄島北部で、絶滅が危惧されている国指定天然記念物「ケナガネズミ」の交通事故死(ロードキル)が後を絶たない。関係者は危機感を募らせており、最大の対策である速度抑制を運転手に強く求めている。

 ロードキルの件数増加の背景には、ケナガネズミの生息数増加がある。森林総合研究所九州支所森林動物研究グループの小高信彦主任研究員(保全生態学)は、森林の回復、マングースの防除とともに、秋冬の繁殖・子育て期に大事な餌となるイタジイの実が豊作となっていることを挙げる。

 イタジイの実が豊作だった2009、10年もロードキル件数が増えたことを挙げ「生息数が増え、県道2号が分断する南北の生息域を行き来する個体が増えた結果、ロードキルが増えた」と分析する。「イタジイの実は、ロードキルが増え始めた21年以上に22年は豊作となっている。生息数が増えて生息域も広がり、事故が多発している県道2号だけではなく、県道70号、国道58号でのロードキル件数も増える可能性がある」と危機感を募らせている。

 沖縄島北部は21年、希少な固有種が生息する生物多様性を認められて世界自然遺産に登録された。世界遺産委員会は登録に当たってロードキル対策の強化を要請していた。

 環境省、県、国頭、大宜味、東のやんばる3村などで構成する世界自然遺産地域連絡会議はこれまでの対策を整理してきたが、環境省やんばる自然保護官事務所の吉川紀愛自然保護官は最も有効な策を「運転手が速度を抑制することだ」と指摘する。

 「ケナガネズミは夜、路上に出てイタジイの実など餌を食べる。動きは鈍いため、運転手が意識して速度を出さなければ、ロードキルは防げる」と強調した。
 (安里周悟)

※注:吉川紀愛自然保護官の「吉」は、「士」が「土」