<書評>『なぜ基地と貧困は沖縄に集中するのか?』 深い場所でつながる問題


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『なぜ基地と貧困は沖縄に集中するのか?』安里長従 志賀信夫著 堀之内出版・2640円

 「基地」と「貧困」は、沖縄の人間が、沖縄に住む者が、そして誰であろうが、そこに生きる人々の幸福を願い、また、そのために現状を憂うとき、避けて通れない大きな問題である。そのため、その二つを主題に、何冊もの本が書かれ、幾つもの論が発表され続けている。

 しかし、その二つは、多くの場合、個別のものとして、あるいは表面的なつながりでしか扱われてこなかった。「反戦平和のための基地反対か、経済振興のための受忍か」の二者択一に対し、「基地が経済振興の足かせになっている」という指摘はやっと一般的に理解されつつある。が、本書の「なぜ、沖縄に集中するのか」は、そうした「基地ゆえの貧困」の指摘でもない。

 「基地」と「貧困」の二つの問題は、深い場所でつながっている。それどころか、一つの大きな権力構造の一部として生じ、それはまた、沖縄を内、外から見る者を囚えている。本書はそれを明快に示す試みである。

 著者の1人は、司法書士として、また「辺野古」県民投票の会の元副代表として二つの問題の現場で関わり、かつ、理論的な論考もある安里長従氏。もう1人は、貧困の理論的研究者として社会的発言も積極的に行っている志賀信夫氏。2人の真の意味での共同執筆で提示された本書の内容は、現状の多面的な社会科学的分析(特に具体的な経済分野におけるそれ)と理論的・思想的洞察により裏付けられている。そのことで、「私の沖縄への思い」や、恣意(しい)的に取り上げたエピソード、統計の曲解、ある条件下での「現場調査」を、一面的な論拠として書かれたもろもろの「沖縄論」と一線を画している。そうした言説が、良心的な意図によるものであっても、沖縄の人の自己理解さえも、差別の構造の中に知らず知らずに閉じ込めるわなとなる、そのことにも鋭い批判を向けている。

 全体を構成する八つの章、二つの補論、六つのコラムによって多角的に照射される「構造」の認識は、私たちに「宿命」を脱することを呼びかけている。

 (友利修・音楽学/国立音楽大教授)


 あさと・ながつぐ 石垣市出身、司法書士。主な著書に「沖縄発 新しい提案―辺野古新基地を止める民主主義の実践」など。

 しが・のぶお 宮崎県出身、県立広島大准教授。主な著書に「貧困理論入門」など。