地域医療の要である自治体病院の取り組みや課題を議論するほか、新型コロナウイルスの対応で得た知見などを共有する「第60回全国自治体病院学会」が10、11の両日、沖縄県那覇市の那覇文化芸術劇場なはーとなどで開かれた。各分野で講演や分科会などがあった。新型コロナウイルスについて県内のクラスター(感染者集団)対応を巡るシンポジウムでは、過去のコロナ対応が一部の組織や医療者に頼り過ぎていたとして、業務を一般化できる体制構築を模索したという報告があった。
クラスターを経験した高齢者施設の取り組みを報告するシンポジウムでは、施設管理者や感染管理認定看護師、ロジスティクス(後方支援)担当らが登壇。感染拡大や入居者の死亡で疲弊する介護現場に対しては、職員の意思を尊重しつつ、一貫性のある支援と他職種の協調が収束を早めることなどが報告された。
質疑応答では今後のコロナ支援を巡り、一部の医療者や組織の情熱に頼り過ぎてノウハウが積み上がっていないとの意見もあった。
座長で県立中部病院の玉城和光院長は「情熱ある人に依存していたことに気付き、みんなが不安を感じている状況」と解説。会場や登壇者らは、平時から顔の見える関係性の構築や業務を協働できる体制づくりの重要性を話し合った。
県コロナ対策本部で医療コーディネーターを務める梅村武寛医師(琉球大学大学院教授)は、コロナ対応での「デジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性」をテーマに講演し、県独自の入院情報共有システム「OCAS(オーキャス)」の運用実績を報告した。行政、消防など他職種との連携が必要となる事態では、低コストで即時性の高い情報技術の活用により、関係機関が認識を共有して先を見通した対応が可能になることを強調した。
(嘉陽拓也)