久米島の松くい虫被害、防除には億単位の見込み 人材不足、対策期間も限定 宮古島では終息に13年


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赤く枯れた松を伐倒する作業員=11日、久米島町仲地(盛長容子通信員撮影)

 【久米島】松くい虫(リュウキュウマツ材線虫病)の被害が急拡大している久米島町は、県などと共にリュウキュウマツへの薬剤の注入と伐倒焼却の防除対策を進めている。だが、コスト面やマンパワー不足、対策期間が秋口から冬に限られるといった課題に直面している。一方、かつて宮古島では松くい虫の被害を受けつつも防除を続け「終息」に至った経緯がある。県の担当者はこの先例を踏まえ「久米島も可能だ」と語る。

 防除のためにリュウキュウマツに注入する薬剤は1本(45ミリリットル)約3千円。幹の太さによるが、直径30センチの松1本につき5本の薬剤を使用する。打ち手の人件費などを踏まえると松1本にかかるコストは数万円に上る。山の奥地など島内全ての松に対処するには「億単位かかり、人手も足りない」(県)のが現状だ。そのため、町と県は優先順位を付け、国指定天然記念物「五枝の松」などから防除対策を施してきた。

 また、対策期間が通年ではなく、おおよそ11~2月ごろに限定されることも、課題の一つだ。体長約1ミリのマツノザイセンチュウはマツノマダラカミキリに付着している。カミキリは4月ごろに羽化し、センチュウは5~7月ごろに増殖し松を枯らしていく。松が赤く枯れて枯死と判明するのは7~9月ごろで、10月に実態を把握し、防除対策の本格的な開始は11月にならざるを得ない。町は現在、沖縄北部森林組合の協力を得ながら、伐倒を進めている。

 1993年に初めてセンチュウが検出された宮古島では伐倒焼却などの防除を続けた結果、2006年に松くい虫被害の終息宣言に至った。

 県の担当者は宮古島と久米島では起伏など地形の違いがあり単純比較はできないとしつつ、本島と違って他市町村と地続きではない離島の特性などを踏まえると、「久米島でも終息は可能だ」との見解を示した。

 現在、防除を続ける町の担当者は「四苦八苦しながら手探りの状態が続いている。なるべく早く終息させたい」と話した。
 (照屋大哲)