避難の合図は赤白の旗型バスタオル 「世界津波の日」サーファーたちが訓練 沖縄・北谷


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎
旗型バスタオルの合図で次々に海から上がるサーファーら=11月5日午後2時20分、北谷町宮城の砂辺海岸

 国連が定めた「世界津波の日」の11月5日、沖縄県北谷町宮城の砂辺海岸でサーファーによる旗型バスタオルを使った避難訓練が開かれた。津波警報が発令された事を想定し、約20人が海に入り訓練を行った。陸から大声で叫んだ際には反応がなかったサーファーたちだが、ホイッスルとバスタオルの合図には気がつき、次々と海から上がってきた。参加した北谷高校2年の生徒(16)は「東日本大震災の時は千葉に住んでいて、とても怖かった。実際に警報が出されても落ち着いて行動したい」と語った。沖縄アミークス小の5年生(11)は「もし津波が来ても、自分や他人の命を守れるように訓練できてよかった」と話した。

 

■沖縄県内での津波と想定される被害

 2011年の東日本大震災で起こった巨大津波の被害は甚大だったが、海に囲まれた島しょ県である沖縄も津波が起こる可能性は十分ある。

 

「明和の大津波」の犠牲者の冥福を祈るため、石垣市では毎年慰霊祭が行われている=22年4月24日(西銘研志郎撮影)

 1771年に石垣島の南方で発生した「明和の大津波」は、マグニチュード7.4の地震により最大30メートルの津波が発生したと考えられており、先島諸島で死者約1万2千人、流失家屋2000棟以上の被害が出た。1960年のチリ津波地震でも当時の羽地村で3人死亡、2人が負傷している。ことし1月のトンガ沖海底噴火では、那覇市や中城湾などで最大30センチの津波が到達し、最大45世帯222人が避難所へ避難した。

 県が公表している「津波浸水想定図」では、最大浸水深は34.7メートルに達し、浸水深1メートル以上となる面積は県面積のおよそ10.5%(240.2平方キロメートル)に広がると試算されている。各市町村の詳しい浸水想定マップは県のホームページで閲覧できる。沖縄気象台の崎濱秀晴さんは「県内で津波が観測されるのは稀だが、避難経路の確認などを日頃から意識して、万が一の場合に迅速に対応してほしい」と話す。

>>21年3月10日琉球新報に掲載された「津波浸水想定図」はこちら

>>県の津波浸水想定図はこちら

 

■「ささいなこと」で命を守る

 バスタオルの赤白の格子柄は、主に船舶などで使われる世界共通の旗であり、20年に気象庁が採用したデザインだ。旗型バスタオルを発案し、避難訓練の発起人でもある長田純一さん(49)=与那原町=も、普段はサーフィンを楽しむ愛好家のひとりだ。旗型バスタオルのプロジェクトを「トリビアル(英語でささいなこと)」と名付けた。

音の届かない場所にいる人や聴覚に障がいを持っている人に向けて気象庁が採用した赤白の格子デザイン

 「サーフィン中に万が一津波が来ても、海に入っているとサイレンの音が聞こえにくいためバスタオル型の旗を作りたいと思った。バスタオルを持ち歩くという“ささいなこと“から防災意識を高めたい」と強調する。「まだ旗の意味があまり知られていないので、普段海に行くサーファーやダイバーから発信して一般の人にも広まっていけば」と語った。

 長田さんは「使う事がないのが理想だが、津波が来てバスタオルを使うことになった場合は、必ず自分の安全を確保してから使用してほしい」と注意を呼びかけた。

 バスタオルの販売はウェブサイトから購入できる。https://tri-via-ll.com

(仲本文子)