デビーズアリーの名盤復刻「夜明けのDREAMING」バンド率いた児玉さん「多くの人に聴いてほしい」


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レコードとCDで復刻発売されたデビーズアリーのアルバム「夜明けのDREAMING」

 1970年代前半にコザ市のライブハウスや米軍基地内のクラブなどでロック演奏をしていた県出身女性シンガー「デビー」こと児玉伊津子(こだまいつこ)さん(70)=東京在=率いるバンド「DEBBIE’S ALLY(デビーズアリー)」が1980年に発表した自主制作アルバム「夜明けのDREAMING(ドリーミング)」が今月3日、42年ぶりにレコードとCDで復刻発売された。日本で70~80年代に録音された「シティポップ」が近年、世界的に再評価される動きが高まっており、児玉さんたちのアルバムもこうした流れの中で発掘された。

 児玉さんは1952年那覇市生まれ。両親は鹿児島県与論町出身で、児玉さんが生まれる直前に那覇市に移り住み、洋生地と大島紬や琉球絣の織物、京呉服の卸販売事業を始めた。

 児玉さんは那覇高校卒業後、琉球大学に進学し、在学中の1970年代初めに沖縄で先駆けの女性ロックシンガーとしてバンド「MUSE(ミューズ)」を結成し、那覇市辻やコザ市のライブハウス、米軍基地内のクラブで演奏を重ねた。在学中は初代ミス琉球大学(ミスメイフラワー)に選ばれたという。

 74年に東京に移り住み、ディスコやライブハウス、アーティストのレコーディングのバックコーラスのほか、彩木沓(さいきしずか)の名で作詞活動を始めた。79年には、つのだ☆ひろ氏が結成した14人編成バンド「JAP’S GAP’S(ジャップス・ギャップス)」にコーラスで参加し、全国ツアーに同行した。

ジャップス・ギャップスでコーラスを務める児玉伊津子さん(右)

 70年代後半から同時に活動してきたバンド・デビーズアリーのアルバム「夜明けのDREAMING」を80年に発表した。全9曲で、うち7曲がオリジナル。児玉さんとプロのセッションミュージシャンの計5人で構成し、曲はジャズフュージョンに共通する技巧的で即興性に富んだ演奏にあふれ、聴衆の感情を震わす児玉さんの歌声が響く。

 アルバムは当時、100枚限定で発売され、東京の複数のレコード店でわずか数十枚が並んだだけだった。このため幻の名盤として中古市場で高値で取引されてきたという。今回、DJのFLATT THE LAIDBACK(フラット・ザ・レイドバック)氏の目に止まり、復刻発売された。同氏は「ここまで洗練されたすごい作品が眠っていたことに驚きを隠せない」と評価している。

 児玉さんは2006年に体調を崩したことを機に、音楽活動から離れ、現在は国際特許管理士、翻訳士の仕事などをしている。

 42年ぶりの復刻発売に、児玉さんは「まさに降って湧いたような幸運だ。このアルバムを多くの人に聴いていただき、好きになっていただけたらうれしい」と話している。

 レコードはローソンエンタテイメントが発売し、税込み4180円。CDはウルトラ・ヴァイヴ発売で、ボーナストラック7曲含む全16曲収録で税込み2530円。

(松永勝利)