【記者解説】土壌基準を求める足がかりに 沖縄県のPFAS全県調査 汚染源の特定目指す


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米軍普天間飛行場内から流出した有機フッ素化合物PFOSを含む泡消火剤=2020年4月10日、宜野湾市

 人体に有害とされる有機フッ素化合物(PFAS)が米軍基地周辺から高い値で検出されている問題で、県は2023年度に水質・土壌の全県的な調査を実施する計画を明らかにした。県は基地周辺以外からもPFASが高い値で検出されている事例もあることから、全県調査で汚染状況をあらためて確認するとともに、特に土壌に関する基準・測定方法を国に求める足がかりにしたい考えだ。

 県は16年度に初めて実施した全県的な調査以降、基地周辺の水質を継続的に調査してきた。ただ、国が20年度に水質に関する基準とその測定方法を定めるまでは米国の測定方法を用いていたために「傾向は分かるが、数値を評価できない」(県環境部環境保全課)状況だった。

 一方、国は土壌に関する基準とその測定方法を設けていない。米軍普天間飛行場でPFASを含む泡消火剤流出事故が発生したことから、市民団体は独自に飛行場に隣接する普天間第二小学校内の土壌を調査。結果、米国環境保護庁が示している土壌から地下水への汚染を防止するためのスクリーニングレベル(目安値)の約29倍となるPFOSが検出された。

 玉城デニー知事は9月、市民団体の要請に応える形で独自に土壌調査を実施する方針を示し、県環境部は主に普天間飛行場・嘉手納基地の周辺での土壌採取に向けて調整を進めている。併せて、国への要請の場でも土壌に関する基準・測定方法を定めるよう求めてきた。

 県は水質調査だけではなく、基準・測定方法がない土壌でも調査結果を積み重ねていくことで、PFAS汚染源を特定するための基地立ち入り調査につなげていきたい考えだ。
 (安里周悟)