「戦争回避の外交を」新外交イニシアティブが提言 政府の安保関連3文書改定巡り


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住民らの抗議を横に、与那国空港から県道を走行する陸上自衛隊の16式機動戦闘車(MCV)=11月17日午後、与那国町

 政府が国家安全保障戦略など安保関連3文書の改定を進めていることを巡り、新外交イニシアティブ(ND、猿田佐世代表)は28日、「戦争を回避せよ」と題した提言を公表した。敵基地攻撃能力を含む軍事力による抑止は相手国の対抗策を招き、軍拡競争をもたらすと指摘。戦争拡大の契機となりうる敵基地攻撃能力の保有を「政策として宣言するのは愚策」だと抑止一辺倒の議論に警鐘をならし、戦争回避のための外交に注力する必要性を訴えた。

 提言は、台湾周辺で武力衝突があれば「最前線になる沖縄が耐え難い犠牲を被ることになる」と懸念を示した。戦争は前線のミサイル部隊などが優先的な標的になるとして、自衛隊がミサイル部隊を配備する石垣島などの離島で、住民避難のためのシェルター建設案が浮上していることに「現実的な施策と言えるのか」と疑問視した。

 戦争を未然に防ぐためには抑止力とともに、相手国が戦争の動機をなくす「安心供与が不可欠」だとし、互いの最低限の要求を認識して両立させる道筋を見いだす外交の実現を訴えた。

 一方、日本が台湾有事回避のため「何もしないという選択肢はない」と強調。米中台3者への働き掛けや、韓国や東南アジア諸国連合などと連携し、回避に向けた「国際世論を強固にすることもできる」と日本外交が果たすべき役割を示した。

 NDは28日、オンラインで提言発表シンポジウムを開いた。執筆者を代表して元内閣官房副長官補の柳沢協二氏は「台湾有事は逃れられない運命ではなく、止める可能性をとことん追求する外交を求めたい」と訴えた。
 (知念征尚)