守るべきは「子どもたちの笑顔」 未来へ「本当の意味での平等な平和の実現を」 琉球新報・NHK復帰50年シンポ<中>


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<守るべきもの、変えたいこと>

子どもたちの笑顔つなぐ 島袋氏

偽りのない平等を実現 斎藤氏

島袋 寛子氏

 荒木さくら 50年後の沖縄へ、守るべきもの、変えたいことは何か。

 島袋寛子 子どもたちの笑顔。子どもの笑顔を守り、子どもが伸び伸び暮らせる沖縄になってほしい。

 比屋根隆 チャレンジする人、チャレンジする人を応援する人を増やしたい。未来を良くしたいのなら、変える人がたくさん出てこないといけない。

 石垣綾音 自然に沖縄のことを知り、語れる環境をつくりたい。沖縄ブームのさなかに生まれ、沖縄はキラキラしたところだということを、なぜかテレビの中で見ていた。「みんなが来たがっている沖縄に、私たち本当に住んでいるのか」という母の一言がひっかかっていた。沖縄の良さを身近に触れられる環境をつくりたい。

 上間園子 人を残したいし、変えてもいきたい。沖縄の人は優しいけれど、優しさや温かさが成長を止めていると考えている。ゆっくりでいいから、心も成長してほしい。

 斎藤幸平 平和と豊かさだ。福島の原発事故をきっかけに、豊かさが実は偽りだと知った。東京が豊かさを享受する裏で、福島に危険なものを建てていた。同じ構図を普天間や辺野古でも感じた。偽りの平和や豊かさは残したくない。本当の意味での、平等な平和と豊かさを実現したい。

 


<残したいもの、残すために必要なこと>

沖縄 もっと知る機会を 石垣氏

斎藤 幸平氏

  沖縄には食や文化、自然と誇りに思えるものがたくさんあるが、それらが少しずつ失われつつある。それぞれが残したいもの、また残すために必要なことは。

 島袋 やはり自然は残したい。沖縄に帰ってくるたびに新しい建物が建って、海が埋め立てられていっているのを見ると、どうしたものかと思う。伝統・文化も大事。エイサーには胸が躍る。道ジュネーの時にはみんなが家から出てくる。この文化は残したい。

 上間 沖縄の海は美しいが、発展に比例して汚れていく気がして悲しい。経済は発展しているが行き過ぎると私たちの知る沖縄がなくなり、違うものになっていく。経済成長は大事だが、沖縄のスローな県民性、優しい心は残したい。沖縄の人は時間に遅れるというが、それでいい。全部を変える必要はない。電車も必要ない。モノレールがあればよい。

 比屋根 ここ数十年切り売りした沖縄らしさを取り戻すという考えが経営者を含めて重要。これまでのビジネスの手法を変え、ソーシャルビジネスを軸にする。利益だけを追求するのではなく、沖縄のために何をするかを考える社会起業家と、彼らを応援する文化が必要だ。全員でなくても余裕のある人が月に100円を彼らに出せば、補助金ではなく自らの意思で投資ができる。その仕組みができれば歴史、伝統、自然を残しながら豊かになれる。県民の自己肯定感も高まる。

 斎藤 1000円を沖縄県民が負担する必要はない。観光客から入島税を千円取ればいい。過剰な開発で海岸が埋め立てられゴルフ場やリゾート施設が造られ、セカンドハウスが増えて家賃が上がる。物価が上がれば貧しい人たちの生活は苦しくなり、失われた自然環境は二度と戻らない。どちらがより大切か問われた時に真っ先に「自然」と答えられない国民なら、教育は失敗している。このままでは地球の気温は2.5度上がり、サンゴの99%が死滅するといわれている。そうなれば観光どころではない。今どういう選択をするかが50年後に向けた大きな問題だと指摘したい。

 石垣 私たちが沖縄を知る機会がもっと必要だ。私自身、高校で日本史の授業を受けても意味を理解できず、大学で琉球史を学んでようやく理解できた。沖縄県民には主体性がないというが、琉球の歴史を知り、このような過去があって今の自分がいると理解できれば興味が広がる。今の沖縄は本土の人々に発見され摘み取られて、外部に委託された形でしか残っていない。
 


<登壇者>

 【パネリスト】
 石垣綾音氏(まちづくりファシリテーター)
 上間園子氏(上間フードアンドライフ社長)
 斎藤幸平氏(東京大准教授)
 島袋寛子氏(歌手)
 比屋根隆氏(レキサス、うむさんラボ社長)
 【コーディネーター】島洋子・琉球新報編集局長
 【司会】荒木さくら・NHKアナウンサー