復帰直後の沖縄〈50年前きょうの1面〉12月2日「サウナ従業員殺害事件、米兵の身柄またも米軍に/引き渡し、協定タテに拒否」―琉球新報アーカイブから―


この記事を書いた人 Avatar photo 滝本 匠

 1972年5月15日に沖縄が日本に復帰してから今年で50年。27年間のアメリカ施政権下から脱して「祖国」の日本に戻るカウントダウンが進む中、本土との格差是正、自衛隊配備や米軍基地の取り扱い、ドル―円の通貨切り替え問題、初の知事選など、大きな歴史のうねりに翻弄される島の住民は山積する課題に直面する、そんな時代だった。復帰した後の沖縄の発展を展望しつつも、さまざまな制度変更にさらされる行政と政治。琉球新報の紙面もその歴史の一日一日を刻んでいった。

 

 日本「復帰」した1972年12月2日の琉球新報1面トップは、「殺人米兵 身柄、またも米軍に/証拠面で影響か/引き渡し、協定タテに拒否/サウナ女子従業員殺し/〝異常発生〟の米兵犯罪」との見出しで、1日未明にコザ市で起きたサウナ従業員殺人事件で米海軍捜査局(NIS)が逮捕した米海兵隊二等兵の身柄が日米地位協定のために日本側に引き渡されない事態がまた起こっていることを伝えている。

 隣には解説記事として「形だけの捜査権/民警、調べで難渋『地位協定』にも疑問」との見出しで問題を指摘している。記事では「県警の調べに『自分が殺した』と犯行を自供したが、身柄はまたも米軍当局に取られ、県警の手で拘禁することができなかった。これはさきに金武村のキャンプ・ハンセン基地内で発生した射殺事件と同じケースで、米兵時件が起こるたびに容疑者の身柄引き渡しが大きな問題となっている」と記している。

 さらに「基地の内、外、公務中、公務外を問わず、米軍当局がいち早く容疑者の身柄を押さえてしまえば『身柄を県警に引き渡さなくていい』という地位協定そのものに疑問が出る。犯人にしてみれば県警に引き渡されるより自国の米軍当局に拘禁された方がいい。だから米兵の犯人たちは事件を起こすと決まって県警の手が届かない基地内に逃げ込む。(中略)こうしたケースが米軍犯罪の一つのパターンになっており、過去迷宮入りした事件もいくつかある」と紹介している。

 米軍関連では「86人解雇へ/米空軍従業員」との記事も掲載している。

 終盤を迎える衆院選では「那覇に集中攻勢/郷友会票などねらう/衆院選」との見出しで、各陣営の動向を伝えている。

 戦後復興の課題のひとつとして、第二次大戦中に日本軍が強制接収した土地の行方に関して「国有地返還/土地連が提訴へ/大戦中に強制接収/430万平方メートルも」との記事を掲載している。

 ◇  ◇  ◇

 5月15日で復帰を迎えたが、沖縄を取り巻く状況は復帰して変わったこともあれば、変わっていないこともあった。琉球新報デジタルは、復帰を迎えた沖縄のその後の姿を琉球新報の紙面でどう記したか、引き続きお届けしていきます。