3年ぶり「肉親に会える」 南洋群島慰霊、遺族ら出発


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「南洋群島慰霊と交流の旅」でサイパン島やテニアン島を訪問する遺族ら=1日、那覇空港

 太平洋戦争時に日米両軍の地上戦が行われた南洋群島の県出身戦没者を追悼する、南洋群島慰霊と交流の旅の出発式が1日、那覇空港で催された。3年ぶりの現地ツアーには90代から10代の遺族ら22人が参加。4泊5日の日程でサイパン島やテニアン島を訪問して慰霊塔を訪れ、現地の人々と交流する。遺族たちは地上戦から78年が経過しても失われることのない肉親への思いを胸に、那覇を出発した。

 南洋群島から沖縄に引き揚げた人でつくる南洋群島帰還者会としての組織的な現地慰霊祭は2019年に終了し、今年からは遺族らの個人参加となった。コロナ禍をはさむ3年ぶりの現地訪問に、同会の上運天賢盛会長(91)=那覇市=は「みんな元気でうれしい」と再会を喜んだ。

 サイパン島の地上戦で家族3人を失った。出発式では「悲しみよりも、肉親に会える喜びが心の中に満ちている」とあいさつし、「慰霊祭では皆で沖縄の歌を歌って魂を弔おう」と参加者に呼びかけた。

 遺族の崎浜洋子さん(83)=本部町=は、サイパン戦で犠牲になった兄と妹に供えようとスーツケースいっぱいに沖縄のお菓子を詰めて来た。生前の母に「生きているうちは(慰霊に)行きなさい」と遺言を託され、定年後は毎年慰霊の旅に参加してきたという。「兄と妹の魂に会えることがうれしい。また来ることができたよと伝えたい」と語った。

 ツアーを企画した国際旅行社の與座嘉博社長は「今後も何らかの形で慰霊の旅を引き継いでいきたい」と述べた。
 (赤嶺玲子)