「一緒に沖縄に帰ろうね」手作りのごちそう詰めた重箱抱え サイパンで家族を亡くした94歳の思い 南洋群島慰霊の旅


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手作りのごちそうが詰まった重箱を携え、肉親の眠るサイパンに出発する横田チヨ子さん=1日、那覇空港

 手作りのごちそうやおもちがぎっしり詰まった重箱を大事に風呂敷に包んで那覇空港に持参したのは、78年前のサイパン島の地上戦で父と兄を失った横田チヨ子さん(94)=宜野湾市=だ。1日に那覇を出発し、サイパン島やテニアン島を訪問する南洋群島慰霊と交流の旅の最高齢参加者だ。

 「体調はいい。亡くなった家族や友人が『また来てよ』と守ってくれているんだと思う」とほほ笑む。持参した重箱はサイパン島のおきなわの塔に供えるという。

 サイパンの戦闘で、チヨ子さん一家は砲爆撃が飛び交う地上を逃げ惑った。チヨ子さんは機銃掃射で脇腹を負傷。父と兄は迫撃砲でみぞおちや腕を負傷し、息絶えた。「遺骨はずっと見つからない。遺骨を探すために毎年現地を訪ねてきたが、おそらく今年が最後の訪問になる。『一緒に沖縄に帰ろうね』と父と兄の魂に伝えます」と思いを語った。
 (赤嶺玲子)