「ウチナージャズ」を再評価 野田隆司<22年県内年末回顧・ポップス>


社会
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7月に沖縄市のミュージックタウン音市場で開催された「ウチナー・ジャズ・ゴーズ・オン」発売記念コンサート

 今年の秋は、「第7回世界のウチナーンチュ大会」や、「美ら島おきなわ文化祭」などの開催で、コロナ禍を経て、音楽イベントが一気に戻ってきた印象を受けた。しかし、現在でも県の対処方針に沿った働きかけは継続されており、ライブ・エンターテインメント業界が完全な日常を取り戻すためには、もう少し時間がかかりそうだ。

 そうした状況の中、目を引いたものの一つは、米施政権時代から続くウチナージャズの再評価である。

 きっかけは6月にリリースされた、ウチナー・ジャズ・オール・スターズによるアルバム「ウチナー・ジャズ・ゴーズ・オン」。真栄里英樹 BIG BANDを軸に、アラン・カヒーぺやテリー重田、上原昌栄ら、ベテランのジャズメンを迎えて、沖縄ジャズ界のスターが一堂に会して録音され、沖縄の戦後ジャズ史を網羅する内容となった。

 同じタイミングで石垣島のジャズバー、すけあくろからアルバム「Teiko Saito meets David Matthews ―A Life with Jazz―」が発表された。同作は、米占領下の沖縄でジャズシンガーとして活躍した宮古島出身の齋藤悌子(旧姓・平良)86歳と、ピアニスト・アレンジャーとして多くの名曲を世界に送り出してきた80歳のデヴィッド・マシューズ(マンハッタン・ジャズ・クインテット)による作品。年齢を感じさせない、新たな音楽の風は、全国的に高く評価された。

 かねて注目を集めてきた沖縄のHIP―HOPムーブメントの躍進も目立った。女性ラッパーの第一人者となったAwich(エイウィッチ)は、日本武道館ライブを成功させ、オピニオンリーダーとしても注目を浴びつつある。Rude―α(ルードアルファ)は慰霊の日、平和への思いを込めた新曲「うむい」を発表。HIP―HOPというジャンルをはみ出した音作りと、普遍的なメッセージは多くの世代の共感を集めた。

 こうした流れに乗って、県内のHIP―HOPシーンも新たな段階に入った。10月には、沖縄市でHIP―HOPを中心にストリート・カルチャーを集めたフェス「Boss―Up Koza」が開催された。これまでと異なる、新しい世代の音楽文化に焦点が当てられた。

 音楽シーンの活性化には、常に新たな才能に目を向けて、異なる視座を提供する必要がある。流行を追うこととは異なり、あらゆるジャンルの才能をすくいあげること。豊かな音楽文化を途絶えさせないためには、非常に大切なことだ。

(ライター)