「命救われた」「告白できた」出会いに背中押され、歌を届け続ける バンド「パラフレーズ」 福祉事業所メンバー4人で活動


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 同じ福祉事業所のメンバーでつくる4人組のアーティスト「Paraphrase」(パラフレーズ)が11月27日、美ら島おきなわ文化祭2022閉会式のステージで演奏した。文化祭の閉幕をオリジナルソングで彩った。それぞれが障がいを抱え、困難に直面することもあった。人との出会いに背中を押され活動を続ける。「海外でライブをしてみたい」と、夢に向かってこれからも歩みを進める。

美ら島おきなわ文化祭の閉会式で演奏する(左から)日和さん、G.G.さん、Smoothさん、きりりんさん=那覇市内(パラフレーズ提供)

 メンバーはボーカル・キーボードの日和(ひより)さん、ベースのG.G.(ジージー)さん、ギターのきりりんさん、エレキギターのSmooth(スムース)さんの4人。ポップスなどを演奏する。全盲の日和さんがうつ病で入所してきたG.G.さんに声をかけたことがきっかけで2016年に結成した。結成してすぐの県内コンテストに自作の1曲で挑戦した。グランプリを狙うも賞は取れなかった。本格的な音楽活動を目指していたが、事業所の相談員には「音楽は趣味でやりなさい」とも言われた。諦めが頭をよぎった。

 練習する姿を見て、曲も聞いてきた1人の利用者から「2人の曲で命が救われた」と声をかけられた。その利用者は入院のため事業所を一時離れた。病院で自殺を図ろうとした時、頭の中で2人の曲が流れ、思いとどまったという。日和さんは「背中を押された」とかけられた言葉をかみしめる。継続を決意し1年で27もの曲を作った。結成翌年の県内コンテストで見事グランプリを獲得し、全国のコンテストに出場する。満を持して臨むも審査員からは「ピッチが甘い」と厳しい指摘。グランプリの獲得も逃した。

 落ち込む2人を勇気づけたのは観客だった。客席の隣りに片思い中の相手が偶然座ったという観客は、パラフレーズのラブソング「Destiny」を聞いて告白を決意したという。後に2人は結婚する。パラフレーズの2人は思いが届き「勇気をもらった」と振り返る。

 これまでマネジャーとして支えてきたきりりんさんを19年にメンバーとして迎え、3人体制となる。21年に全国のコンテストに再挑戦。見事、歌唱・演奏賞を獲得した。22年5月にSmoothさんを迎え、現在の4人体制となった。

 閉会式でも「きれいな声に感動した」と言葉を受け取った。再び「勇気をもらった」と話す。これからも観客と心を通わせながら「歌の処方箋を届けます」と前を向く。

(金盛文香)