航空自衛隊の曲芸飛行隊「ブルーインパルス」による展示飛行が11日、宮古島市で行われた。民間機以外の使用を認めないとした「屋良覚書」がある下地島空港の利用を巡って注目を集めたが、空港使用に反対する県と国とで協議が進められ、最終的には宮古空港を使用することで両者が「歩み寄った」(自衛隊関係者)形となった。だが、先島諸島の公共インフラを使用したい意向を政府が示す中、平和団体からは今回の空港使用が「軍事利用につながる」との懸念が渦巻いている。
展示飛行を巡っては座喜味一幸宮古島市長が「コロナ禍で落ち込んだ経済活性化の一つになる」として、10月に宮古空港や下地島空港の利用を検討するよう県に要望した。
「屋良覚書」盾に
那覇空港と共同利用している那覇基地からの離着陸を検討していた空自も、市などの要請後、民間空港の使用を県に打診した経緯がある。
これに対し県は「屋良覚書」を盾に、下地島空港の利用には「県としては(使用を認めるのは)厳しい」と空自に繰り返し説明。「事実上、断った」(県関係者)形だ。だが、その他の空港については「思想や団体を色分けして判断するのは難しい」として、事実上、使用を容認した。
幹部の一人は「下地島だけは使わせないように注力した」と話した。
一方、空自は東京五輪などでも飛行したブルーインパルスは有事の想定とは異なるとしつつ「安全性を考えると、より広い下地島を使えればいいというところはあった」(宮古島分屯基地司令の高木寿宗2等空佐)と語る。
防衛省内では有事に展開する部隊が使わなければ運用面での練習にはならないとの意見が根強い。だが、同省関係者は「(民間空港を使う)前例を作ったという意味では大きい」と宮古空港使用の意義を語った。
保革共闘にひずみ
座喜味市長は展示飛行の観覧後、今回の飛行を容認する考えを改めて示した。下地島空港の使用に対しては「厳しい」との認識を示しつつ「今後の国の動き(次第)だと思う」と含みも持たせた。
県に宮古空港などの使用を検討するよう要望した座喜味市長は、支持母体の「ワンチームみゃーく」が保革共闘であることを念頭に、これまで革新側に一定の配慮をしてきた。
今回、一歩、踏み込んだ座喜味市長の「要望」の背景について市幹部は「予算確保の道をつくるというのが大きいのではないか」と話す。市では市総合体育館の建て替えが課題だ。「さまざまな予算確保のためには何でもNOでは行政が進まない」(同幹部)。
自衛隊問題については支持母体内でも意見が分かれる。与党市議7人のうち、11日に開かれた抗議集会に参加したのは3人。与党市議の一人は「保守地盤の宮古で革新色が強くなるのは避けたいのが本音だ」と吐露した。
座喜味市長による要望の前には、市内青年4団体も市や県に空港利用を要請していた。
支持母体の革新系幹部の一人は、座喜味市長が民間空港の使用を県に要請したことについて「県が(民間空港の使用を)断っても、断らなくても県に責任を負わせ、自分にはマイナスにならない」と背景を説明。「だからこそ、県にはしっかり断ってほしかった」と話した。自衛隊に関しては玉虫色でまとまっていた「ワンチームみゃーく」だが、その体制にひずみが出始めている。
(知念征尚、佐野真慈、明真南斗)