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制度のバリアフリーを<伊是名夏子100センチの視界から>137


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
イラストも描き、手作りした結婚式の招待状

 わが子の通う小学校は保護者が関わることが多く、最低でも週1回、多い時には週2、3回学校に行っています。バスを利用するのですが、バス停から学校までの道のりに階段があるので、車椅子の私はバスを降りると遠回りをして学校に向かいます。

 先日、子どもの授業参観を終え、いつものように一人遠回りして急いでバス停に向かっていました。あと50メートルでバス停に着くというところでバスが来て、先に並んでいた保護者たちが乗車し始めました。最後の人が乗り込む前に私も列に並ぶことができ、運転手さんに「乗せてください」と伝えました。すると「乗車1分前に来られると急ぐから、今度から早くきて」と言われたのです。「すみません」と謝って、運転手がスロープを出してくれている間、一人悶々と考えました。運転手さんも急いでいる時にスロープを出すのってめんどくさいよね、最近寒いしね。でもバスを待たせたわけでもないし、私にだけ愚痴をこぼされるのは悲しい。

 「バスは今着きましたよね?どれくらい早く来ればいいのですか?私、週1、2回このバスを使っていますが、初めて言われました」と伝えると「早く来てくれたら助かるってこと」と言われました。

 その運転手さんはスロープを丁寧に出してくれたし、乗車を拒否することもなかったし、親切でいい人でしょう。でもぼそりと言われた一言に、私はちくりと傷つきます。だって私もできる限り急いで来たし、歩ける人だと言われないのだから。バスの構造がバリアフリーではないせいで、私も運転手さんも嫌な気持ちがするのです。

 車椅子ユーザーの毎日は、まるでくじ引きのよう。いい人にあたると受け入れてもらえるシステム、言い換えると、誰にあたるかで嫌な気持ちがしたり、バスに乗せてもらえなかったりすることすらあります。だから毎回「今日はどんな運転手さんかな、いい人だといいな」と願い、時には乗車が怖くなる時もあります。

 いい人だけに頼るのではなく、みんな安心して、便利に過ごせるように、心のバリアフリーではなく、建物や制度のバリアフリーが進んでほしいと切に願います。だって人は誰でも急いでいたり、体調が悪かったりと、いい人でいられないことがあるのですから。いろいろな人の働きやすさ、生活のしやすさ、幸せのために、より構造や制度のバリアフリーが進むことを願います。


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。