「ボンッ」煙に覆われ、戦の爪痕、いまだ地中に 嘉手納、不発弾破裂か


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
黄リン弾の不発弾から白煙が上がる工事現場=13日午前9時半ごろ、嘉手納町の嘉手納漁港近く(水野崇司さん提供)

 【嘉手納】ショベルカーが掘った約50センチの穴から吹き出す白煙。不発弾が破裂したとみられる嘉手納漁港近くの工事現場では、13日午前9時過ぎから約1時間、ゆらゆらと煙が出続けた。現場を見守る人から「黄リン弾だろうね」との会話も聞かれた。午前10時過ぎ、火花とともに「ボンッ」と響いた低い破裂音は約100メートル離れた嘉手納町漁業組合の事務所にも届いた。白煙は2階建ての家屋を越えるほど上り、北風の影響で辺りを霧のように覆った。

 「こりゃまずい」。漁港側に避難した工事業者の男性(68)は破裂音が聞こえると不安がよぎった。風に乗った煙は避難場所にも届き「今までに嗅いだことのない、化学物質が燃えているような臭い」が立ち込めた。視界も悪くなり、現場は一時騒然とした。

 現場近くにはカヤックや自然散策が体験できる比謝川自然体験センターがある。センターを利用する予定だった県外からの修学旅行生を乗せたバスは現場付近の通行を断念し、研修先を変更した。不発弾の破裂前にセンターに到着した別の修学旅行生の団体も船でのクルーズが中止になった。

 事故時、クルーズの準備で嘉手納漁港にいた水野崇司さん(51)は中止は仕方ないとしつつ「戦時中のものが沖縄にはまだ眠っていると実感した」と語った。

 「煙が上がっている」。嘉手納町役場には午前9時2分に第一報が入った。担当職員が現場に向かい、午前10時20分には當山宏町長も現場に駆け付けた。町民や工事業者の安全を確認した當山町長は「黄リン弾だったのが不幸中の幸いだ」と真剣な面持ちで語った。町は緊急会議を開き、今後工事する地域は過去に整備されている場合も、探査実績がない場所などは徹底的に調査する方針を確認した。
 (石井恵理菜、名嘉一心)