古い門中墓「初めて見た」…戦後に接収された地に残る遺物「歴史資料になる」 那覇市は一部を現地保存へ 空自基地内に古墓・壕


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古墓近くで発見された日本軍の地下壕=14日午前、航空自衛隊那覇基地(又吉康秀撮影)

 航空自衛隊那覇基地内で、那覇市宮城地域の大屋(うふや)門中の古墓などが発見された。14日に現場を確認した大屋門中の上原達雄さん(76)は戦後、古墓を含む宮城集落の大半が米軍基地として接収されたため、基地外の新しい墓へ骨が移されたと証言した。上原さん自身は「古い門中墓を初めて見た」と驚きの声を上げた。

 この地域は戦後、米軍基地として接収され、現在は自衛隊基地となっている。大屋門中の墓は勝連トラバーチンという上質な石が使われている。古い骨を入れる「池」という区画が三つあるのは珍しいという。墓内部に少し骨も残っていた。市は大屋門中と骨の扱いを話し合う。上原さんは「良い石を使っており素晴らしい墓だ。いい歴史資料になると思う」と誇らしげに話した。

 古墓の近くで発見された日本軍の地下壕は近くにある砲台や小禄飛行場の防衛が任務で、「若生(わかお)部隊」という部隊が布陣した。

 戦闘の跡はなく、米軍が上陸してすぐ撤退したとみられる。丘を掘って造られ、全長百数十メートルに及ぶ。これほど保存状態が良いのは珍しいという。壕内からは未使用の砲弾などが見つかった。今後、坑木を取り出して展示する予定。

 発見された三つの門中墓のうち、安次嶺と上ン門の門中墓は道路工事に伴い壊されるため、記録や出土品のみを残す「記録保存」となる。壕は一部壊されるが、残りは現地で保存する。大屋門中の墓も現地で保存する。

 那覇市文化財課の山道崚さんは「遺跡として出た墓を使用していた人々の子孫が分かるのは大変貴重な事例だ。基地内はどういう文化財が残っているのか分からない空白地帯でもある。今回の事例は未調査部分と今後比較していく上でも重要だ」と話した。
 (伊佐尚記)