薬きょうに日本軍編成表 海軍壕で発見「貴重な資料」 あすから遺留品特別展 沖縄・豊見城


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
旧海軍司令部壕の発掘調査で見つかった日本製の25ミリ砲の薬きょうと、中に詰め込まれていた旧日本海軍の編成表(旧海軍司令部壕事業所提供)

 10月に行われた沖縄県豊見城市の旧海軍司令部壕の遺骨発掘調査で、日本製の25ミリ砲弾の薬きょうの中に詰められた旧日本海軍の編成表が見つかった。沖縄戦で首里方面に配備された海軍の陸戦部隊「丸山大隊」の隊員とみられる氏名や階級が記されている。同壕事業所の酒井達也主査は「兵士が生きた証しを残そうと薬きょうに詰めたのではないか」と推察する。専門家は「このような事例は珍しい。沖縄に配備された旧日本海軍の文書が残っている例は少なく、貴重な資料だ」と指摘した。

遺留品特別展への来場を呼びかける酒井達也主査=15日、豊見城市の旧海軍司令部壕事業所

 弾丸部が切断された直径約4センチ、長さ13センチの筒状の薬きょうに丸めて詰められていた。壕の非公開部分で発掘され、陸上自衛隊に引き渡していたが、不発弾処理の際に自衛隊員が薬きょう内の編成表に気付き、壕事業所に報告した。

 編成表には「陸戦隊編成表 中隊長 海軍大尉 丸山友喜」と記されている。丸山大隊を率いた大尉は丸山貞喜氏で、同一人物とみられるという。『沖縄方面海軍作戦』によると、丸山大隊の570人は沖縄戦時の1945年5月中旬に首里方面に配備され、陸軍部隊の南部撤退を援護。その後、残存する兵士約80人が糸満市喜屋武で夜襲を行ったが消息不明とされている。

 軍事に詳しい県平和祈念資料館の仲程勝哉学芸員は「部隊の内容が分かる文書は敵の手に渡る前に処分されることが多く、特に沖縄の旧日本海軍が作成した文書で残っている物は少ない。貴重な資料だ」と指摘した。

 壕事業所の酒井主査は「見つかった遺留品を通して戦争のむなしさや悲惨さを伝えていきたい」と語った。

 遺骨発掘調査では印鑑など数多くの遺留品も発掘された。これらを初公開する特別展が17日から旧海軍司令部壕で開催される。1月31日まで。午前9時から午後5時。観覧無料(壕内見学は有料)。問い合わせは同壕事業所、電話098(850)4055。詳細は同壕のホームページで。

 (赤嶺玲子)