「軍拡で戦争は止められない」 沖縄は「対中戦争の前線に」…反撃拠点化を懸念 那覇で安保関連3文書巡るシンポ


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「沖縄は日米の対中戦争の前線となる」と指摘する海渡雄一弁護士=18日、那覇市の教育福祉会館

 政府が16日に閣議決定した安全保障関連3文書に関するシンポジウム「戦争準備を知る、声をあげる、止める」(ノーモア沖縄戦命どぅ宝の会主催)が18日、那覇市の教育福祉会館で開かれた。国を相手取った訴訟を多数手掛ける弁護士の海渡雄一氏が「大軍拡と敵基地攻撃能力で戦争が止められるか」と題して講演した。海渡氏は、政府が3文書で2023年度から5年間の防衛費の総額を43兆円と計画し、さらに反撃能力(敵基地攻撃能力)も保有すると打ち出したことについて「大軍拡と敵基地攻撃能力で戦争は止められない。むしろ危機を高めるだけだ」と強調した。

 海渡氏は改定された国家安全保障戦略について「中国に対してはっきりと『敵』と書いている文書」だと説明。敵基地攻撃能力の保有により、中国が台湾を軍事侵攻する兆候があれば、日本がミサイルで先制攻撃できるようになるとした。「日本側が攻撃されていない段階でもこちらから先制攻撃をして、米中戦争に発展する。それができる法的枠組みができてしまった」と懸念を示した。

安保関連3文書に関するシンポジウムに参加した市民ら

 海渡氏は防衛費の増大によって調達される兵器の大半は沖縄に配備され、「対中戦争の前線となる」と指摘した。その上で「沖縄と日本全土を戦場にしないために、今こそ対立を発展させない取り組みが必要だ。日中の市民が共に手を携えて、戦わないことを目指して交流していくべきだ」と語った。

 防衛省を取材する琉球新報東京支社の明真南斗記者もオンラインで参加し「県内には『反撃能力』につながる長射程ミサイルが配備される計画がある。米軍基地の過重負担もある中、自衛隊も増強され、沖縄が『反撃能力』の拠点の一つになることを意味する」と話した。

 主催団体発起人の一人、ジャーナリストの三上智恵氏は「3文書には自衛隊が国民保護の役割を担うと書いているが、これはうそだ。南西諸島を守るための軍事増強というのもうそで、米国の覇権を守るために軍事的にも経済的にも日米一体となっている。南西諸島を守るための軍備増強じゃないということを肝に銘じてほしい」と話した。
 (梅田正覚)