安保3文書改定「政府は思考停止」…元山仁士郎さん、嘲笑を超え「おかしいと声を上げ続ける」


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2015年7月、安保関連法案の衆院通過を受け、国会前で抗議する元山さん

 安全保障関連3文書の改定で、他国のミサイル基地などを破壊することが可能となった。「政府は、国家間の緊張解決には軍備増強しかないという『思考停止』に陥っている」と批判するのは東京都の大学院生元山仁士郎さん(31)。2015年に成立した安保関連法の反対運動に、学生団体SEALDs(シールズ)=解散=のメンバーとして加わった。専守防衛を揺るがす政策に「問題があるなら、軍事力でなく外交で交渉するべきだ。声を上げ続ける」と話す。

 米軍普天間飛行場のある沖縄県宜野湾市出身。大学進学のため11年に上京し、地元でよく見た米兵の姿がほとんどないことに気付いた。「米軍基地が必要というなら、なぜ沖縄に集中させるのか。沖縄は犠牲になってもいいのか」。政治に関心を持つきっかけとなった。

 県民の4人に1人が命を落としたとされる沖縄戦の話を、物心ついた頃から聞いて育った。「沖縄が戦場になるのを止めたい」。集団的自衛権の行使を可能にし、自衛隊の海外活動を拡大する安保関連法に危機感を抱きシールズの活動に参加。仲間と国会前に集まり、反戦や憲法順守を訴えた。

 活動は幅広い世代を巻き込み、法成立前夜は国会前を多くの人で埋め尽くした。「大きなうねりのようなものを感じた」。15年9月19日に安保関連法が成立したが「声を上げてもいいんだと、多くの人に伝わった」と残した足跡を自負する。

オンライン取材に応じる元山仁士郎さん=16日午後

 反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を認めた今回の安保関連3文書改定は、15年に続く安保政策の大転換。元山さんは「憲法で定める『戦力不保持』『国の交戦権否定』に反するのに、政府は十分な説明をしていない」と憤る。

 だが7年前のように大きな市民運動は起きず、国民的な議論にはなっていない。「国の方針に反対の声を上げても何も変わらず、むしろ嘲笑するような雰囲気がある。政府の決定をどこか遠いものと感じている若者も多いのではないか」。新型コロナウイルス禍で集まりにくい状況も影響しているとみる。

 それでも諦めてはいない。「どんな課題も、すぐには解決しない。今回も、何かおかしいと疑問を感じている人はいるはずだ」。同じ思いの仲間と一緒に、自分にできることを探し続ける。
(共同通信)