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先島からの住民避難、1日2万500人を九州へ輸送 完了に10日 国民保護計画を沖縄県が試算


この記事を書いた人 Avatar photo 梅田 正覚

 他国からの武力攻撃事態など有事に備え、自治体が住民の避難誘導をする国民保護計画に基づき、県などが先島地方からの住民避難に向けた輸送力を検討したところ、平時より2倍程度増強した1日当たり約2万500人を県外に輸送できると試算していたことが19日までに、分かった。民間の航空機と船舶を活用した現時点で最大の輸送力を想定した。先島地方の全住民を九州に避難させるまでに9~10日程度掛かると見込んでいる。

 県は武力攻撃事態を想定した国民保護図上訓練を来年3月に初めて実施する。図上訓練に向けて航空機や船舶、空港や港湾のハンドリングなども踏まえた最大の輸送力を試算し、16日の県議会総務企画委員会で明らかにした。

 図上訓練の想定によると、人口5万5845人(21年1月時点)の八重山地域では平時の輸送力は空路で1日当たり5270人。有事の際に強化した場合、空路と海路を利用すると、竹富町と与那国町の住民が石垣市に移動し、新石垣空港と石垣港から1日当たり1万人が九州へ避難できる。

 人口5万6680人(同)の宮古地域では、平時の輸送能力は1日当たり4030人。有事の際は空路と海路を利用し、多良間村と大神島の住民が宮古島市へ移動し、宮古空港と下地島空港、平良港から1日当たり1万500人が九州へ避難できる。

 図上訓練では県内全域を要避難地域に設定。先島地方の住民は武力攻撃の恐れがない九州に避難し、本島地域の住民は屋内避難とする。県が福岡県と鹿児島県へ聞き取りした結果、先島地域の約5万世帯は両県のホテルなどで受け入れ可能とした。

 一方、政府は16日に閣議決定した国家安全保障戦略では「自衛隊・海上保安庁による国民保護への対応」を明記し、「武力攻撃より十分に先立って、南西地域を含む住民の迅速な避難を実現」などとした。

 16日の総務企画委で池原秀典県防災危機管理課長は「事態認定前に、できる範囲で自衛隊も住民の輸送を担うこともありうる。ただ、(軍民分離の原則をうたう)ジュネーブ条約の関係もあるので、武力攻撃事態に陥ったら民間輸送力を考えないといけない」との見解を示した。 (梅田正覚)