「蝶々夫人」戦後の悲劇を重ね 沖縄オペラ、東京で初公演


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
都内で初公演された名作オペラ「蝶々夫人」に出演する黒島舞季子さん(右)=21日、台東区の浅草公会堂

 【東京】明治初期の長崎を舞台にプッチーニの名作オペラ「蝶々夫人」を、蝶々さんの家に仕えた女性スズキの朗読による回想で物語る「蝶々夫人」(沖縄オペラアカデミー主催)が21日、東京都台東区の浅草公会堂で上演された。舞台朗読家の熊澤南水さんを迎え、黒島舞季子さん(ソプラノ)の歌と合わせ、蝶々夫人の数奇な運命を描いた。

 東京公演は黒島さんによると「15年の歳月を経てやっと実を結んだ公演」と言い、初の上演が実現した。舞台は大沼徹さん(バリトン)、知花錦さん(俳優)、仲田淳也さん(ピアノ)、高宮城凌さん(バイオリン)らで構成した。県内からスタッフ15人も上京し舞台に臨んだ。

 物語は、アメリカ士官兵のピンカートンの長崎での妻となった蝶々さん(黒島さん)の「真実の愛」と信じつつも、夢破れ、すべてを失う悲劇を描く。熊澤さんの名調子の朗読と、黒島さんの歌とが重なり、蝶々さんが向き合う深い悲哀に観衆を引き込む。

 舞台終演後、多くの観客の来場に黒島さんは「多くの人の協力で実現した公演。感謝でいっぱい」と成功を喜んだ。蝶々夫人の悲劇は沖縄の戦後史とも重なるストーリー。黒島さんは「いつになるかは分からないが那覇公演も実現できたら」と話した。
 (斎藤学)