振興予算に頼らぬ制度を 基地問題で抵抗できない<沖縄関係予算 沖国大教授・佐藤学氏に聞く>


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 日本の高度経済成長時代、米統治下にあった沖縄では、生活基盤整備や産業発展が大きく遅れた。日本復帰に際し国の責任でインフラ整備を進めるため、沖縄振興策がつくられ、今も続く一括計上や高率補助の制度が盛り込まれた。だが復帰から30年が経過する頃には「もう必要ない」との議論が県内でも出た。

 高率補助の公共工事は自前で出すお金が少なくて済む。橋や道路を造れば雇用を生み出せるし、沖縄の政治家も目に見える成果を上げられるため、公共工事偏重の財政になってしまった。

 予算は本来、必要経費を積み上げる。だが安倍晋三首相(当時)が2013年に21年度まで毎年度3千億円台を確保すると表明し、直後に仲井真弘多知事(同)が米軍普天間飛行場移設先の名護市辺野古の埋め立てを承認した。振興予算は基地と密接に結びついていると日本社会に受け止められ「金をくれてやっているのだから、文句を言うな」と言われている。

 辺野古移設に反対する政治家さえも3千億円台確保が大事だとする。「つかみ金」で沖縄が得をしていると信じ込まされている。押し付けられた常識だ。知恵を働かせ、振興予算に依存しない制度設計を進めないといけない。財布のひもを握られていては、基地問題でも抵抗できない。

 沖縄も人口減少が見込まれるが、他県に比べると緩やかであるなど、有利な条件がある。各省庁と交渉し、さまざまなプログラムを引っ張ってくれば、振興予算がなくても財政は成り立つ。

 最近は振興予算に疑問を持つ若い地方議員が出てきた。22年度から10年間の第6次沖縄振興計画が終わるまでに制度案を作るのは難しいかもしれないが、少しずつ知見を積み上げていくべきだ。

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 1958年生まれ。東京都出身。ピッツバーグ大政治学大学院博士課程満期退学。専攻は政治学。著書に「米国型自治の行方」など。
(共同通信)

沖縄国際大の佐藤学教授