【記者解説】自衛隊の協力は限定的、自治体の住民避難計画策定に難しさ<国民保護・沖縄県内自治体アンケート>


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与那国町で実施された弾道ミサイルを想定した住民避難訓練の参加者ら=2022年11月30日午前、与那国町

 安全保障関連3文書の改定により南西諸島の防衛力の大幅強化が見込まれる中、沖縄県内41市町村を対象にした国民保護アンケートの結果からは、最前線に位置する沖縄の住民避難に向けた計画策定の難しさが浮き彫りとなった。 (1面に関連)

 沖縄は広大な島しょ県であり、さらに国内有数の観光立県として数多くの観光客を迎える。その上、有事の際は攻撃対象となり得る米軍基地と自衛隊施設が集中するといった多くのリスクを抱える。これらの悪条件の下、急にふって湧いた有事の住民避難を担うことになった市町村は戸惑いを隠せない。

 避難経路を巡っては、3文書で「自衛隊・海上保安庁による国民保護への対応」が明記された。だが、自衛隊の主たる任務は武力攻撃の排除で、住民避難や救援の支援は「(任務に)支障のない範囲」で行うとする姿勢は変わっていない。県も自衛隊の協力は限定的と捉えており、自衛隊と海上保安庁の輸送力を事前の避難パターン策定に反映させられない難しさがうかがえた。

 県内で12団体しかない避難実施要領のパターンを策定している自治体でも実効性を疑問視する。担当者は「北朝鮮の弾道ミサイルに備えた計画になっており、台湾有事に使える代物ではない。県内のほとんどの自治体も同様だ」と指摘する。国が台湾有事の具体的なシミュレーションを示していないのも、市町村の避難実施要領作成の障壁となっている。

 国民保護計画の実効性が担保できない以上、避難計画を万能視することもまた危うさを含んでおり、沖縄周辺の環境安定に向けた日本をはじめとした諸外国の取り組みが求められている。

(梅田正覚、知念征尚)