有事の際の国民保護、避難に必要な輸送能力「把握していない」63% 沖縄県内の自治体、本紙調査 避難人数も26%が把握せず
琉球新報が2022年12月31日付で報じた国民保護に関する県内41市町村へのアンケート調査結果からは、有事の際の住民避難誘導に必要な輸送力を把握する難しさなど、多くの自治体が課題に直面している現状が浮き彫りになった。国民保護に詳しい国士舘大の中林啓修准教授にアンケート結果への見方を聞いた。
アンケートを通じて、県内各自治体が国民保護に真剣に取り組んでいることが分かった。要避難者の人数把握はある程度進んでいるが、輸送能力が把握できているのは「ある程度」を含めて15自治体にとどまった。
先島諸島や本島周辺離島の自治体では、「ある程度」を含めるとほとんどの自治体が把握していると回答しており、努力が見られる。
一方、米軍基地が集中する本島中部の10自治体のうち5自治体が、「米軍基地が立地することに起因する避難誘導」や「米軍基地従業員の避難誘導」を課題に挙げた。市町村だけでは対応が難しいことも想定され、しっかり考えなければいけない課題だ。
基地関連も含め、住民避難を巡って同じ沖縄県内でも地域ごとにさまざまな課題がある。避難が必要な人数は防災の観点からも把握できているが、輸送力については航空会社やバス会社といった民間との連携も必要になる。そういったノウハウ不足を挙げる自治体も多かった。
避難の実施要領の策定は市町村の仕事だと割りきるのではなく、国や県も協力しながら作っていくことが重要だ。
避難実施要領のパターン作成は、有事が起きてしまった時に備える取り組みだ。多くの自治体が有事が起こらないような外交努力の重要性を訴えた上で、避難実施要領の策定に取り組んでいるのは正しい理解だと言える。国民保護制度を使わない取り組みが最優先である。
(危機管理学)