「はいたいコラム」 火山の噴火は観光資源


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 島んちゅのみなさん、はいたい~! 島は島でも東京の南海上180キロ! 三宅島へ行ってきました。伊豆諸島の一つですが東京都に属し、飛行機ならわずか50分でひとっ飛び。2000年の噴火で全島民が4年半、島外へ避難したことは記憶に新しく、今も活動を続ける活火山です。

 火山体験遊歩道を歩きました。見渡す限り真っ黒な溶岩で覆われた「溶岩原」。1983年の噴火で阿古地区にあった340軒の集落はまるごと溶岩に飲み込まれたのです。
 しかし、島のジオマップによると、その時いた1300人の住人はすべて避難し、一人の死傷者も出さなかったというではありませんか。わたしは驚きました。近年、三宅島の噴火は1940年、1962年、1983年、2000年に起きています。ほぼ20年周期で噴火は確実に繰り返されるという現実を島の人々は経験として知っているのです。島で暮らすということは、火山とともに生きること。これが防災意識を高めることは間違いありません。
 黒い溶岩原のところどころに緑が芽生えています。ハチジョウイタドリという植物で、長く丈夫な根っこを1メートル以上伸ばして溶岩の層を突き破って育ちます。いずれは枯れて腐葉土となり、そこからまた新たな植物が芽吹き、何百年かけて緑が再生するため、パイオニア植物と呼ばれています。ハチジョウイタドリさんは生命の循環の最初の礎なのです。
 そうです! 噴火の跡を見ることは、地球誕生のダイナミックな生命のなりたちを体感することなのでした。自分の足で地球から噴出したマグマの上を歩き、目で見て、手で触れることができるのです(持ち帰りは禁止~)。かけらを持ち上げると軽い! スコリアと呼ばれる多孔質の軽石で、これが地球の中から噴出してきたのかと思うと、地球も、島も、みんな元気に活動しているんだと感じずにはいられません。
 火山を災害の元として嫌うのではなく、噴火が起きればうまく避難して、地球を感じる旅の観光資源として利用する。火山も地球も生命体ならば、それを積極的に活用する島の人々もまたすばらしくたくましい生命力にあふれていました。
 沖縄では今月29日に海底資源シンポジウムがありますね。海底からどんな島んちゅぬ宝が出てくるのか楽しみです。(フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)
(第1、3日曜掲載)
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 小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ。介護・福祉、食、農業をテーマにした番組司会、講演などで活躍中。野菜を作る「ベジアナ」として、農ある暮らしの豊かさを提唱、全国の農村を回る。