「利用者を笑顔に」365日いつでもリハビリ 頭と体を動かす動画を制作 コロナ禍、認知症予防、介護負担減に アカバナプロジェクト


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アカバナチャンネルの動画に合わせて手を動かす人たち=12月29日、宜野湾市のふれあいデイサービス愛知の家

 コロナ禍における高齢者の認知症予防や介護現場の負担軽減を目的に、頭と体を動かす動画を制作・配信する「アカバナプロジェクト」。メンバーで特別支援学校教諭の山城郷士さん(42)とケアマネジャーの中村文彦さん(42)らが、約2年4カ月かけ制作した365日分の動画が12月、完成した。チャンネルを利用する沖縄県宜野湾市内のデイサービスでは、動画に合わせて利用者が体を動かし、和気あいあいとした雰囲気が広がった。

 1本10分程度の動画は、山城さんが進行する「今日は何日でしょうか?」の日付クイズからスタート。12月の28日は「御用納め」、29日は「福の日」など、毎回その日の記念日や生活に関する情報も織り交ぜる。後半は、中村さんが体を動かす軽い体操を方言で解説し、笑いを交えた内容になっている。

 外出制限などで高齢者の認知力や筋力低下が危惧される中、同プロジェクトは、赤い羽根共同募金の助成を受け2020年8月、福祉施設関係者からコロナ禍の困りごとなどを聞き取った。1日を意識できるよう日付の確認や、座ってできる頭や体のリハビリ動画への要望を受け、ユーチューブに「アカバナチャンネル」を開設し、動画配信を始めた。2人は仕事の後や休日に動画を撮影。1日分の動画編集に最長10時間要したこともあった。

 宜野湾市のふれあいデイサービス愛知の家は配信当初から、毎日施設内でチャンネル動画を流している。29日分の動画を視聴後、利用者の白保裕子さん(86)は「体がほかほかする」と笑顔。国吉惠子さん(89)は「みんなと一緒にできて楽しい」と話した。

 介護現場の職員は業務負担の軽減を実感する。同デイサービス管理者の照屋圭祐さんは「施設から出られず、面会禁止の制限もあった中、動画を見て利用者の笑顔が増えた。レク活動に活用でき、とても助かっている」と語った。

 この日は1年分の動画の完成報告会も開かれた。デイサービスでレク活動を10年間続けてきた中村さん。「笑いながら楽しくできるリハビリ動画作りを心掛けている」と目を細めた。山城さんは「介護施設や在宅介護に携わる方に向け広く発信し、活用してもらいたい」と話した。

 今後、県内約1500カ所の高齢者関係福祉施設に情報提供を行うほか、各市町村の担当課へチャンネル動画を収録したDVDを寄贈する。動画視聴は、ユーチューブで「アカバナチャンネル」を検索。

(吉田早希)