成人年齢が18歳に引き下げられた昨年4月の民法改正後、初めての「成人の日」を9日に迎える。今回は18、19、20歳が同時に「新成人」となるが、節目の日の受け止めは年齢で異なるようだ。
5日夜、沖縄受験ゼミナール那覇本校の教室には18歳の高校3年生が集まり、真剣な表情で問題集を解いていた。黒板には「本番通りに」の文字。「本番」とは、1週間後の14日から始まる大学入試共通テストのことだ。一部の18歳は受験勉強の大詰めで「成人の日」を迎える。
同校に通う吉田琉さんと又吉泰豊(たいほう)さんは、誕生日に友人から「成人おめでとう」とちゃかされたが、大人になった実感はないという。頭の中を占めるのは「成人」ではなく「受験」だ。「睡眠と食事以外は勉強している。もうパンクしそう」と苦笑いする。
又吉さんは「成人してさまざまな契約が結べるようになったが、18歳はまだ自分では何も決められない。20歳までに、徐々に大人になっていくんだと思う」と心境を語る。大人と子どもの間は明確に線引きされているのではなく、グラデーションになっているという認識のようだ。
県内市町村は「成人の日」の式典に、これまでと同様、2022年度に20歳を迎える若者を招く。名護市の新成人が担う恒例行事「神ケ森(じんがむい)光文字」も、これまで通り20歳が準備を進めている。実行委員長の会社員、安慶田蘭菜さんは「20歳という人生の中の大きな節目の年に、自覚と責任を持ち、いい年にしていきたい」と語った。例年の新成人と同じような心境だ。
実行委事務局長の米盛光織(ほたる)さんも「自分の行動に責任が付いてくる時期に達したことを自覚したい」と話す。名護市街を見下ろす山に点灯する漢字は、今を象徴する、前向きで輝くような一文字に決めたという。点灯式は8日夜の予定だ。
一方、19歳は誕生日に「成人」になったわけでもなく、式典で祝われることもない。沖縄ラフ&ピース専門学校で映像製作を学ぶ19歳の城間太吾(だいご)さんは「成人式のような儀式がないと実感が湧かない」と戸惑う。18歳や20歳よりも、節目の実感は薄いようだ。
城間さんは高校卒業後、実践的な学びを求めて専門学校に進学した。昨年は沖縄デジタル映像祭では監督を務めたCM作品が特別賞、企業賞に輝くなど、プロへの階段を上った。
「高校の時は好きで見ていた作品も、今は作り手の視点で見ている」と、1年の成長を実感し、前へ進む。
(稲福政俊、増田健太)