【深掘り】新たなミサイル配備、沖縄県と市町村の足並みそろわず 県が反対に踏み込む背景とは


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沖縄県庁(資料写真)

 敵基地攻撃能力(反撃能力)を始めとした新たなミサイル配備計画に対し、沖縄県は反対に踏み込む方向で政府への要請内容の調整に入った。県と基地所在市町村でつくる県軍用地転用促進・基地問題協議会(軍転協)も「丁寧な説明」を政府に求めていくことを確認したが、一方で是非に踏む込む議論はなかった。玉城県政は「自治体にさまざまな意見がある中で、踏み込んだ要請は難しい」(県関係者)と判断し、市町村を含めた軍転協とは別に、県として独自に要請を行うことを検討する。

 昨年12月に閣議決定した安全保障関連3文書は、陸上自衛隊那覇駐屯地を拠点とする第15旅団の師団化や、離島の空港・港湾を平時から自衛隊が利用する方針など、沖縄が深く関わる事象が多く盛り込まれた。

 一方、新たな部隊や施設、装備の配置が計画される地域に対し、国の説明が後回しとなる事例が続く。年末に表明された沖縄訓練場(沖縄市)に陸自の補給拠点を新設する計画も、地元の桑江朝千夫市長への沖縄防衛局からの説明は年をまたぐ形となった。

 県がミサイル計画への反対に踏み込む背景には、地元説明が軽視されたまま、県内で自衛隊の増強が続くことにくぎを刺す狙いがある。県関係者は「国が安保3文書や予算を矢継ぎ早に出して、(防衛力強化を)既成事実のように言ってくるのを黙って見ているわけにいかない」と話す。

 ただ、昨年実施された7市長選全てで自公の候補が勝利するなど、市部を中心に政府との協調を重視するスタンスの首長が伸長している。特に基地問題で県政と市町村は一枚岩とはいえず、互いに出方をうかがうような緊張感が漂う。

 6日に北谷町内で開かれた軍転協の2022年度総会では、米軍普天間飛行場の県外・国外移設要求の項目を巡り、宜野湾市の米須良清基地政策部長から「あらゆる方策を講じる」の文言を入れるよう意見が上がる場面があった。

 県担当者は「県内移設を容認しているとのメッセージを送りかねない」として従来の文言を維持する考えを説明。一方で、宜野湾市と連携し「速やかな運用停止を含む一日も早い危険性除去が図れるよう取り組む」として理解を求めた。

 米軍那覇港湾施設(那覇軍港)へのオスプレイなど航空機の飛来も「断じて容認できない」との記述となったが、これについて知念覚那覇市長は「容認できないとの立場は変わらない」と同調しつつ、「いくら抗議の声を上げても今後も同様の運用の可能性がある」とも指摘。飛来時の事前通知を求めるといった取り組みを市として進める考え方を説明した。

(知念征尚)