県内の研究者やジャーナリストでつくる対外問題研究会は8日発売の雑誌「世界」の2月号で「『沖縄返還』五〇年を超えて 沖縄からの主張」と題し、「台湾有事」や自衛隊増強に関して、日本政府への提言をまとめ、発表した。中国の動きや台湾と隣接することを理由に、沖縄や奄美大島(鹿児島県)への自衛隊増強が進む現状に関し「地政学的、という理由が、再び三度、軍事的な衣を纏(まと)って沖縄に押し付けられる」と指摘し、住民の暮らしを無視して、軍事拠点化することに異議を唱えた。
対外問題研究会の「主張」は、台湾を巡る米中の対立を念頭に、台湾に対して「あいまい政策」を進めてきた米国政府や議会の直近の動き、中国の対外政策などについて多角的な視点で分析。米国と中国との経済切り離しが不可能だとし、「米国の『あいまい政策』はぶれながら維持され、『口先介入』を繰り返して中国をけん制する、これまでの基本方針が当面続くと考えられる」とし、日本が台湾を巡る争いに先走る必要はないと指摘した。
中国にとって台湾の武力解放は「最後の手段」で共産党政権にとって「最悪の結果」だとする一方、「台湾有事」が起こる可能性は「否定できない」とした。
米中にとって、台湾問題が悩みの種であり、対応次第で国内で批判にさらされ、新興国と従来の覇権国との緊張関係が望まない戦争へとつながる「トゥキディデスの罠」に陥る可能性も指摘した。
その上で(1)沖縄がアジア太平洋地域の国々を結びつける「津梁(しんりょう)の島」になる(2)台湾危機を回避するために、日米中は、台湾の将来を平和的な手段で創り出すことに尽力する(3)日本は自らの役割を模索し、進行する軍事増強に歯止めを掛ける―ことを提言した。
(池田哲平)