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同じ制度を誰もが使えるために <伊是名夏子100センチの視界から>139


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
イラストも描き、手作りした結婚式の招待状

 私もパートナーも自分の生まれながらの名前を使い続けたいので、事実婚をしています。普段の生活で困ることはほとんどないのですが、公的な制度を使う時や、子どもの養育に関する書類を求められた時、説明や追加資料が必要で手間もお金もかかります。戸籍上の夫婦はやらなくてもいいことを求められるので、自分が認められていないと感じて悲しくなることもあります。時には「わがままだから夫婦別姓をしている」と思われることもあり、自分らしく生きていたいという当たり前の思いが伝わりません。

 同性カップルも戸籍上の夫婦になれないので、事実婚をしている私は、彼らの気持ちが分かっていると思っていました。しかしそれは間違いだったのです。私は婚姻届を出すことができますが、あえて出さないことを選んでいて、同性だとそれすら選べません。選択肢がないのです。

 私は出産の時だけ婚姻届を出しているので、子どもの親権を持ったり、子どもと戸籍を一つにしたりすることができますが、同性カップルは大きなハードルがあります。そして私は異性カップルなので、説明をしなくても夫婦としてみなされたり、子どもの親として見られたりしますが、同性カップルだと誤解されたり、時には心ない言葉をかけられたりすることもあるでしょう。セクシュアルマイノリティーが置かれている状況は、目に見えにくい差別がたくさんとあると気づきました。

 どうしてあなたは異性愛者なの? どうして婚姻届を出しているの? と聞くことは少ないですが、マイノリティーに対しては、理解するために、いいことかのように理由、説明を求めることがあります。しかしそれも差別につながることがあります。何が差別に当たるかが分かりにくい時は、制度を整え何が差別に当たるかを明記することが大切です。

 また例外的にパートナーシップ制度や、事実婚が認められても、婚姻制度で守られている遺産相続や保険金の受取人にはなれないことが多いので、平等とは程遠いです。その改善を求めた時、「特別な制度があるからいいでしょう、それ以上求めるのはわがままだよ」と思われて、より差別が深刻になるかもしれません。例外的な制度をつくるのではなく、既存にある、たくさんの人が使っている制度を、誰もが平等に利用したいのです。「沖縄県差別のない人権尊重社会づくり条例(仮称)」にも、その視点が盛り込まれることを期待します。


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。