子どもたちの幸せのために 藤川伸治(教職員のメンタルヘルスプロジェクト事務局長)<未来へいっぽにほ>


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藤川 伸治さん(教職員のメンタルヘルスプロジェクト事務局長)

 すべての学校が子どもと教職員にとって安心安全で、心満たされ、幸せを感じる場になってほしいと誰もが願っている。現状はどうだろうか。2021年度国公私立小中高・特別支援学校では、いじめの認知件数は全体で61万5351件(前年比9万8188件増)だった。不登校、暴力行為の発生件数も前年より増加している。

 琉球大学の西本裕輝教授は、昨年11月に開催された教員のメンタルヘルスをテーマにしたシンポジウムで、忙しいと感じている教員ほど、落ち着きのない子や指導困難な子の増加などを実感する割合が高く、多忙な教師が子どもの抱える問題に対処できなくなっているのではないかと述べた。沖縄における小中学校調査では、コロナ前に比べて約7割が忙しくなったという結果も報告、事態は一層深刻になっていると指摘した。

 文科省の調査によると21年度、公立小中高校の教員で精神疾患による病休者(1カ月以上の休職者を含む)は過去最多の5897人、沖縄は277人、在職者に占める割合は1・79%で過去最高だった。

 精神疾患による休職者増の要因として、多忙でゆとりが失われ、同僚間で支え合う関係性が希薄になっていることが考えられる。一人では対応できないほどの仕事を抱え、悩んでいても同僚に相談できない職場で働くのはつらく、心を病むこともある。そんなつらさを抱えたままでは子どもたちに愛情をもって接することも難しく、いじめなど子どもからのSOSに気づくのも遅れてしまう。ゆとりがあり、教職員同士の支え合いがある職員室を創ることは、子どもたちの幸せにもつながる。