【記者解説】沖縄の基地負担軽減への責任を放棄 機能強化、増す県民の負担 米の離島即応部隊創設


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎
米海兵隊員と陸上自衛隊の水陸機動団が連携して行われた共同訓練=2020年2月、金武町の金武ブルービーチ訓練場(又吉康秀撮影)

 米海兵隊が在沖米海兵隊を離島に機動的に展開する「海兵沿岸連隊(MLR)」に改編することは、米軍と自衛隊が中国に対抗する軍事体制に沖縄全体が組み込まれることを意味する。米議会調査局の報告書によると、海兵隊はキャンプ・シュワブとキャンプ・ハンセンの部隊をMLRに改編する計画を立てている。今後、最新の兵器が配備される可能性があり、基地機能強化につながる。

 2022年3月、米ハワイ州で既存部隊を改編する形で最初のMLRを配備しており、沖縄でも既存の部隊を振り分ける見通し。一方、MLR創設で、配備される兵器には変化があるとみられる。最新式の無人地対艦ミサイル発射機や長射程のトマホークが沖縄に置かれる可能性がある。

 MLRは、海兵隊が離島などに攻撃拠点を設けて対応する構想「遠征前方基地作戦(EABO)」を実現する部隊だ。県内の島々に分散して戦う事態が想定される。米軍が沖縄を重視するほど、有事の場合に狙われる危険性も高まる。

 海兵隊はこれまでも県内でEABOに関連する訓練を繰り返してきた。22年12月にはハンセンとシュワブにまたがる中部訓練場で、関連する訓練が実施され、武装した米兵が誤って訓練場外の県道を歩行する問題も生じた。だが、MLR創設で訓練がさらに激しくなれば、県民の負担は増す。

 中国の軍事行動活発化を背景に、米軍と自衛隊の南西シフトは顕著になっており、沖縄の基地負担は増えつつある。地域情勢への対応を名目に政府が沖縄への基地負担を当然視すれば、沖縄の基地負担軽減という責任を放棄したことになる。

(明真南斗)