継承新年/とうてつ 選外佳作・両手に爺/星野灯 ネイチャー・パレット/天海薫<琉球詩壇・1月14日>


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎

継承新年 

とうてつ(高知県)


 

賢い犬のリードに降った雨のひかりで出来た夜だった
国の代表が勝ってもわたしの生活は変わらないから
これで何か美味しいものでも食べなって
神様になった国家元首の紙幣を渡して
モノクロのガジュマルの木を植えていたあなたは
改稿できないうむいを
その日わたしにリレーした
ごめんなさいすいませんありがとうございます大丈夫ですって看護師さんに言いながらICUで
夏祭りで死んでいった金魚の重さしか無いあなたの身体に駆け寄れば
真夜中に分け合ったJefのハムエッグサンドの甘さを急に思い出す急いでいるので端折る
美味しいとか美味しくないとか
おかしいとかおかしいとか
愚かだとか
わたしは正直に言ってしまうから
この先も苦しいだろうが
許せって
あなたの手からこぼれたマージナルレッドのバトンを拾う
わかっていますとても厳しいです
でも
よろこんで


西原裕美・選

寸評

やや荒削りな気もするが圧倒的な存在感に非常に惹かれる。


 

選外佳作1

両手に爺 

星野灯(兵庫県)

 

カウンターの中央に座り
麺の茹でる様を眺めながら
炒飯に付属のスープをすする

「いらっしゃいませ」
吸い込まれるように爺が入店
私の隣でラーメンのご注文

「いらっしゃいませ」
の声も聞かずにもう一爺入店
持ち帰り餃子と待ち時間用にソーダ

両手に爺
左手にラーメンすする爺
右手にソーダちびちび舐める爺

妙にここだけ密度が高い
爺私爺
三人だけの中華料理屋

左手の爺
こちらに構わず、新聞を広げ
右手の爺
こちら見るなり、私の飲むスープを
単品で頼む、
50円也

それぞれの時間が流れているようで
交わっているような気もする
三人だけの中華料理屋
 


 

選外佳作2

ネイチャー・パレット

天海薫(沖縄県)

 

ドードーの羽はどんな色
ネイチャー・パレット 今一つ
大切な色がこぼれ落ちる

画面に映る未来の展望は鮮やかで
湖畔に映る自然の眺望は色褪せて
ネイチャー・パレット また一つ
大切な色がこぼれ落ちる

地上の楽園は無限の電子世界へ
美しき生命の輝きは星座の如く永遠に
ネイチャー・パレット もう一つ
大切な色がこぼれ落ちる

世界を包む電波に乗せて
誰もが自然の色を見たとき
地上に残るはどんな色

僅かな色を抱きしめて
未来のピカソは何を描く
ネイチャー・パレット 今一つ
大切な色がこぼれ落ちる