【記者解説】無人ミサイル、民間地にも展開の可能性 周辺住民に被害の恐れ


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 日米の外務・防衛担当閣僚が安全保障協議委員会(2プラス2)の成果として示した共同発表は、日米が軍事的に一体となって南西諸島の基地機能を強化する方針を明確に打ち出している。有事を想定した部隊配備だけでなく、平時からも共同演習・訓練を増やすことや民間の空港・港湾利用の方針も盛り込んでおり、県民生活への影響は大きい。基地負担の固定化も懸念される。

 海兵隊のグアム移転見直しで、沖縄に残る人員規模は変わらないが、グアムに移転するはずだった司令部が沖縄にとどまる計画に変わった。沖縄を引き続き軍事的に重視し、全体として基地機能を強化する日米の意思表示に他ならない。

 今後、県内では特に在沖米海兵隊と陸上自衛隊の一体化が顕著になる見通しだ。

 共同発表で既存部隊からの改編が記された海兵隊の「海兵沿岸連隊(MLR)」と、南西諸島に駐屯する陸自部隊は共に主力装備として地対艦ミサイルが配備される。吉田圭秀陸上幕僚長は12日の記者会見で「日米の島しょ防衛能力を強化する点で極めて有効」と語った。

 一方、MLRに配備される対艦ミサイルの発射機は、無人で動く最新式を予定している。ミサイル発射機を無人化するのは、攻撃を受ける可能性を想定し、被害を最小限にするためだ。日米両政府は有事に米軍や自衛隊の施設外も活用して中国に対抗する戦略を描いており、こうした米軍のミサイルが民間地に展開する可能性もある。

 もし攻撃を受ければ、無人化によって米兵の被害は減らせても、周囲に民間人がいれば被害を受ける恐れがある。日米両政府の計画は防衛・軍事の強化一辺倒で、そこに県民が暮らしているという視点が欠けている。
 (明真南斗)