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土日も出勤「しんどくても休めない」 部活指導、中学校教師に重い負担<先生の心が折れたとき 教員不足問題>プロローグ2


土日も出勤「しんどくても休めない」 部活指導、中学校教師に重い負担<先生の心が折れたとき 教員不足問題>プロローグ2
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
「休憩時間ゼロが当たり前」と語る男性教師は、学校を出るのが午後8時を回ることもある(写真はイメージ。本文とは関係ありません)

 先生って忙しいんでしょ? 教員志望の生徒からそう聞かれると、本島南部の中学校に勤める男性教師(30代)は返答に困ってしまう。教師という仕事は楽しい。天職だと思っている。でも―。

 中学校教師にとって、大きな負担となっているのが部活指導だ。男性は「全く経験のない」競技の顧問を務め、平日は放課後の午後4時~6時(夏場は7時まで)、部員と過ごす。本来の勤務時間は午後4時45分までだが「部活の責任は顧問にある」。生徒を置いて帰るわけにはいかない。

 部活の後は、保護者への電話連絡や教育委員会への提出物の対応、授業準備などに追われる。年度末は深夜まで残業することもあるが、普段は午後8時ごろには退勤するよう努めている。体が持たないからだ。

 ■休日「月に1回あるかないか」

 土日も部活指導がある。午前中に練習があれば、一度帰宅して昼寝し、夕方から学校に戻って午後9時半ごろまで雑務をこなす。部活の消耗品を買いに行くのも土日だ。全てを自分の時間として過ごせる休日は「月に1日あるかないか」と言う。

 3年前から診療内科に通い、不安を和らげる薬を飲んでいる。夜中、何度も目が覚める。「しんどくても休めない。休むと他の先生の仕事を増やしてしまう」と自らに言い聞かせる一方、「定年までエネルギーが持つ自信はありません」と不安を口にした。

 平日も朝から晩まで息つく暇がないのは小学校教師と共通する。午前7時半前に出勤してから退勤まで約13時間。1日4~5コマの授業に加え、担任する生徒の検温確認、保護者への連絡、掲示物の作成…。少しでも作業時間を確保しようと昼食を数分で済ませるのも小学校教師と同様だ。「(決められた)休憩時間がいつなのか、覚えてもいない。あってないようなものだから」と自嘲気味に話す。

 ■思春期への対応も

 相手は感じやすい年ごろの生徒たち。普段の目配りが欠かせない。気になる子がいれば「最近どうね? ちょっと話しない?」と声をかける。悩みなどに耳を傾けるのは、昼休みや放課後の時間になる。男性は「生徒を守るのが教師の仕事。休憩より大事だと思っている」と話し、生徒への対応を最優先する。

 本島南部の中学校に勤める男性教師(40代)も「休憩時間ゼロが当たり前。休憩した分だけ帰宅が遅くなる」とため息をつく。それでも退勤は午後8時を過ぎ、朝と合わせた残業時間は4時間になることも。土日のいずれかも学校に来て、採点や行事予定の作成など「言い尽くせないほど」多様な業務を行う。

 学校運営の中核を担う男性は「中学校は思春期の生徒が相手。心のケアなど丁寧に向き合う必要があるが、教師が多忙でいっぱいいっぱいの状況だ。こちらの心が折れそうになることもある」と危機感を示した。

(眞崎裕史)

 

先生の心が折れたとき

 精神疾患による教師の病気休職者が増え続けている。文部科学省の調査によると2021年度、全国の公立小中高・特別支援学校で過去最多の5897人。沖縄も過去10年間で最多の199人、在職者数に占める割合は全国で最も高い1・29%だった。心を病んだ理由はそれぞれだが、当事者の多くは要因の一つに、就業時間内に終えられるはずがない業務量を指摘する。休職者の増加は他の教員の業務負担につながり、さらに休職者が出る連鎖が起きかねない。心が折れてしまうほど多忙な教員の1日のスケジュールを取材した。

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