「金もうけ」より「人もうけ」農業で幸せのお裾分け 畑貸し指導、“廃棄物”再生も 宜野座村の新里さん


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
幸福度の高い農業を目指す新里博伸さん(右)と孫の暁海さんと愛犬

 【宜野座】宜野座村松田区が誇る光景、どこまでも見渡せる空と太平洋がつながっているかのような絶景が望める丘陵地形に、2千坪のバナナ畑がある。管理する新里博伸さん(70)が「バナナを500株以上は数えていない」と話す農業へのスタンスは、出荷よりもお裾分け、「金もうけ」よりも「人もうけ」であり、幸福度の高い農業を目指す。

 新里さんの農園では、バナナを中心に芋類や野菜を栽培している。新里さんからバナナを「株分け」してもらい、同様にバナナを普及する農家もバナナブームの「兆し」から増加している。利益よりも「幸の分配」を優先する新里さん。青果市場が新里さんのタピオカを全て買い取るという好条件の話がある中、いざ収穫する段階で、「ゆいまーる」精神から、全て地域にお裾分けしてしまったというエピソードもある。

 新里さんの畑には「じぃじぃのお家は畑(の作業場)だね」と、孫たちが遊びに訪れ、一緒に収穫を体験したり、農業を自然に親しんだりする光景が日常だ。「かつては畑仕事は手伝わされる印象だったが、自分の畑では孫は楽しげだ」と新里さん。

 孫のため、必然的に農薬を使用しない有機栽培になった。「定年退職し、農業を始めたくても、農地探しなど、どうすればいいか分からないという人が、意外に宜野座村にもいる。自分で育てた野菜を自分で食べる感動を味わってほしい」と、自身の畑を貸し出し、快く指導することで、県外から農業を志して移住する若者らに機会と場所を提供している。

 また、これまで家畜の餌や廃棄されていたバナナの先端部「バナナハート」と呼ばれる花の部分を、栄養価の高い健康食だと、宜野座村内の料理研究家ら「有志」と共に普及を始めた。バナナの茎の皮で帽子も作る。「これからは農業も教育も、柔軟さと発想力が大事だと思う。畑で過ごすと発想力が豊かになる。畑は空気がおいしいし、大地の精霊に囲まれている感覚も心を清めてくれる」と、畑への愛情は加速する。
 (池辺賢児通信員)

どこまでも広がる新里さんの農園