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「授業をしたくない」…高校教師によぎる思い 早朝講座、進路相談、心理的負担大きく<先生の心が折れたとき 教員不足問題>プロローグ3


「授業をしたくない」…高校教師によぎる思い 早朝講座、進路相談、心理的負担大きく<先生の心が折れたとき 教員不足問題>プロローグ3
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
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 さっき寝たと思ったのに、もう朝だ。辺りがまだ暗い午前5時40分。生徒数が少ない高校に勤める女性教師(30代)はベッドを出ると、ニュースをチェックしながら出勤の支度を始める。

 午前7時に学校に着くと、プリントの印刷など授業の準備に取りかかる。7時半から50分間の早朝講座を担当し、終わるとすぐに職員朝会へ。「出勤時からスタートダッシュして、そのままフル回転で走り抜ける感覚」と話す。

 授業は補習を含めて1日5~6コマこなす。初夏に同じ教科の同僚が休みに入った。しかし補充教員は付かないままで、その分の授業をカバーしている。職員室に戻っても席に着く余裕はなく、プリントを持ち替えて次の教室へ向かう。

 就職や進学など、人生の大きな決断を迫られる高校生。教師は授業以外にも早朝や放課後講座で学力面をサポートし、進路相談などで生徒が望む将来へ伴走する。やりがいを感じる一方、心理的負担もまた大きい。

 不足教員分の授業のカバー、進路指導の担当のほか、学年主任なども兼任している。1日5~6コマの授業が終わると「会議、会議」(女性)に追われる。

 昼休みや放課後は、空き教室などで生徒の進路相談に応じる。一人一人の希望を聞き、募集要項を読み込んで進学先を探す。悩みにじっくり耳を傾けていると、いつの間にか2時間ほどたっていることもある。

 ■トイレも行けず

 授業や会議、進路指導などを終え、自分の席に戻るのは午後6時半~7時ごろ。すでに2時間近い残業だ。机に「山盛り」となった会議資料や授業のプリントなどを整理し、8時ごろに退勤する。しかし、これで終わりではない。

 帰宅後にトイレに入ってハッとする。「出勤前に入ってから、これが初めてのトイレだ」。夕食を済ませると、今度は翌日の授業の準備。どう教えれば分かりやすいか、深夜まで考えを巡らせる。日付が変わった午前0時半ごろ、長い1日が終わり、ようやくベッドに潜り込む。

 教員歴10年を超える女性は「目の前に来た仕事をこなすことで精いっぱいで、水を飲む暇さえない。ふとした時に『授業をしたくない』と思ってしまう」と打ち明けた。

 ■帰宅後も電話

 午前6時半ごろ、本島南部の高校に勤める女性(40代)は家族で一番先に自宅を出る。通勤時間は1時間以上。小学生から高校生まで3人の子どもを気に掛けながら、沖縄自動車道を南に進む。「戸締まりした」という子どもからのメールを見て、一安心する。

 帰り道も渋滞するので、午後6時ごろにタイムカードを押して学校を出る。帰宅して夕食を終えると、子どもの様子を見ながら午後10時ごろまで教材研究。「共働きの家庭が増えて、帰宅後に保護者へ電話連絡することが増えた」とも言う。

 希望してつかんだ教師という職業。今の学校は「やりがいを感じる間もないくらいせわしい。教員は使命感が強く、自分自身の苦しみになかなか気付けない」と話し、精神面など若い教師を心配する。

(眞崎裕史)

 

先生の心が折れたとき

 精神疾患による教師の病気休職者が増え続けている。文部科学省の調査によると2021年度、全国の公立小中高・特別支援学校で過去最多の5897人。沖縄も過去10年間で最多の199人、在職者数に占める割合は全国で最も高い1・29%だった。心を病んだ理由はそれぞれだが、当事者の多くは要因の一つに、就業時間内に終えられるはずがない業務量を指摘する。休職者の増加は他の教員の業務負担につながり、さらに休職者が出る連鎖が起きかねない。心が折れてしまうほど多忙な教員の1日のスケジュールを取材した。

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