人工透析「このままでは受け入れ不可能に」 八重山、患者増も深刻な人手不足


この記事を書いた人 アバター画像 瀬底 正志郎
県立八重山病院(資料写真)

 深刻な人手不足を背景とした人工透析医療の逼迫(ひっぱく)を受けて、沖縄県石垣市内で透析施設のある県立八重山病院、石垣島徳洲会病院、よなは医院の3医療機関が10日、市内で会合を開いた。各医療機関の院長や看護師長、透析スタッフなどが参加。現場の状況や今後の対応などについて話し合った。参加者らは「とにかく人手が足らないことが問題。このままでは今年のうちに受け入れ不可能になる」と強調した。オンラインで県議の大浜一郎氏も同席した。

 郡内では高齢化の影響などで年々、人工透析患者が増加しており、1900年代までは100人以下だった患者が2001年に100人を突破。その後、増加傾向は止まることなく、現在では174人が人工透析を受けている。

 人工透析は1回4時間程度の時間を要し、最低でも週3回の実施が必要となる。
 本島と比較して肥満や高血圧、糖尿病などリスクを抱えた人が八重山には多いことも増加の要因の一つだと見られる。
 医療機関では新型コロナウイルスのまん延以降、旅行者を対象とした人工透析を中止しているが、昨年末は地元への帰省者の透析も断る事態になっているという。

 また管内には、すぐにでも透析が必要な人が40~50人程度いるといい、最も多くの透析患者を受け入れているよなは医院の与那覇朝樹院長は「大変厳しい状況にあり、これ以上受け入れるのは難しい。今後は本島など島外での治療が必要になる」と危惧する。

 現在、午前と午後の2クールで対応している八重山病院では、準夜勤を入れた3クールを目指し、人員の増強を県病院事業局に申し入れているが、受け入れられていない。同院の篠崎裕子院長は「増員は1人のみだった。これでは3クール回すことは不可能だ」と県の対応に不満を漏らした。

 石垣島徳洲会病院の友寄幸子看護部長は「グループ内での人繰りや人材派遣会社にもお願いしているが本土でも人手不足があり、そちらにとられている」と明かした。

 よなは医院では、渡航費の補助や賃金アップ、住宅の準備などの対応をとっているが「これでも看護師が集まらない。これ以上の条件となると民間だけでは難しい」と訴えた。

 大浜氏は「離島医療政策の問題。政治判断が必要になる事態だ。会派や今回、視察で参加できなかった次呂久県議とも情報共有してしっかり対応していきたい」と話した。

 現場の参加者からは「八重山は地元医療従事者が少ない。市としての施策が必要」「肥満や高血圧などが多い。改善が必要」「市は医療政策に無関心なところがある」などの意見があった。
(八重山毎日新聞提供)