岸田文雄首相が20日、今春にも新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを2類相当から5類に移行する方針を示した。今後、新型コロナに特化した行政施策や医療体制が段階的に縮小されていく見通しだ。沖縄県対策本部の医療コーディネーター、佐々木秀章医師は「今後は受診や入院調整も行政による管理から自己管理になる。個々の感染防止策がより重要になる」と解説する。
5類への移行後、新型コロナ対応の特別措置法の対象外となれば、県対策本部は廃止される可能性もある。春以降に流行すれば、県が担ってきた受診や入院調整は各病院の負担になり、救急搬送の混雑も起きかねない。医療関係者らは「県の指揮系統がなくなれば一定の混乱は避けられない。新たな正念場がくるのか」と危惧している。
もう一つの懸念は、3年ぶりに流行している季節性インフルエンザだ。ピークは例年1~2月だが、夏場に増加することもある。一方の新型コロナは「人流」の要因が大きく、季節を選ばない。
佐々木医師は「医療提供体制は拡充されないので、二つの感染症に注意しなければ医療ひっ迫のリスクは通年に広がる」と指摘した。
入院リスクの高い高齢者のいる家族にも不安が広がる。80歳の父親が院内感染を経験したという女性(50)は「今も大変な状況なのに、5類への引き下げで感染リスクが矮小(わいしょう)化されてしまう」と懸念を示した。
(嘉陽拓也、金盛文香)